第30話 そして……
さらに時は流れ……『運命の対決の時』。
俺は王城で盛大な壮行を受け、ミツキがいる魔王城の大広間にやってきている。
俺は勇者の正装である白装束に身を包み、ミツキは魔王の正装である黒衣に身を包んでいる。
そして俺は勇者のロングソード、ミツキは魔王のレイピアを手にして、二人対峙している。
ただ、今回が今までと違うのは、審判者で使徒であるベルフェゴールとシロエルがいないということ。
俺が前方のミツキを見つめ、ミツキは俺を見つめ。ベルフェゴールシロエルの『始めっ!』という戦闘開始の合図は、いつまでたっても響かない。
俺はミツキに近づく。ミツキの眼前にまで行き、剣を捨てる。ミツキもカランとレイピアを手から滑り落した。
二人で見つめ合い、笑みを交わす。
「今は運命の対決の時。何百回目かの、やり直しの果て」
「そうね。そして私たちは『対決』を選ばない。『共存』を選ぶわ」
「うん」
「世界は書き換えられたの。私たちが書き換えたのよ」
「そうだね。やっとだね。でも王国の重鎮たちはそれで納得するかな? しなくてもいいけど」
「それはこちらも同じ。だけど私が魔王だから、魔族たちには無理やり納得させるわ」
そして……俺とミツキは二人、抱擁を交わす。
そのままの流れで、キス。唇を重ねる。
俺は、そのミツキとの口づけの後に言葉を交わす。
「こんなに永い間一緒にいるのに、僕ら、キスするのさえ初めてだね」
「やっと。ハルトにはお預け食らわせていたから」
「それはそうなんだけど、実はミツキの方が我慢は辛かったのを僕は知っている」
「それ、女の私に向かって言うの!」
言葉は非難だが、ミツキは俺の首に手を回しながら甘えてくる。
「でね。やっとここまで来たからお願いがあるの」
「なに? 俺に改まってお願いとか……ちょっと怖いんだけど」
「もう一度。今度はただただ純粋に楽しみたい」
「キス?」
「違う。違わないって言いたいけど、実は別の事」
そして、二人見つめ合って。目と目で会話して。
何百回目+さらにもう一度――のやり直しをする。
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