間幕 ――女神たち――

 異世界の上位階にある神界。


 そこに存在する女神たちは、異世界の崇拝の対象となっている。


 女神たちは異世界を自由自在に操る絶対の支配者ではないが、その手は広く大きく深く、異世界に伸びている。



 ◇◇◇◇◇◇



 その神界。


 広い、とても広い大広間にぽつんとテーブルが一つ。そこに二人の女神が座っていた。


 白(シロ)の女神。長い白髪を床にまで伸ばした美女。


 黒(クロ)の女神。長い黒髪を床にまで伸ばした美女。


 白の女神が黒の女神に語りかける。


「勇者を宣託で選んでシロエルを付けたのだけど、思うようには動かないものね、黒」


「そうね、白。こちらが選んだ魔王にはベルフェゴールを目付けにしたのだけど、魔王はベルフェゴールの指示を無視して勝手に動いているわ」


「でもそれが醍醐味というか、楽しみでもあるから」


「どちらが勝つか賭けをしましょうという話から始まったこの『勝負』。『運命の対決の時』に至るまで、私たちの永い時間の一時を楽しませてくれれば、この魔王と勇者の『闘鶏』『闘牛』は娯楽として合格なのだけど」


「魔王は勝手にやり直しをしはじめて」


「ええ。勝手ね」


 白の女神と黒の女神が、同時に笑い声を漏らす。


「この結果、どうなるかしら?」


「本当にどうなるかしら? 魔王の『やり直し』は上手くいくかしら? あるいは失敗するかしら? 対決よりもそちらが娯楽の本筋になってしまっているけど、私としては不満はないわ」


「二人に付けた使徒たちはどう動くかしら」


「そうね。あの二匹には、『運命の対決の時』での八百長を阻止する審判者としての役割しか命じていないから……あの二匹の動きも不確定要素。それも含めて存分に楽しませてもらいましょう」


 ふふふと、二人の漏らした声がただただ広い空間にこだまする。


 勇者ハルトと魔王ミツキの運命は、本人たちが知る由もない高みから見下ろされている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る