第2話 荏原郡・野犬の集団
ここへくるまで、請負所でいわれたような野犬の群れには出くわしていない。
恐らく依頼を受けた賞金稼ぎたちが倒したんだろう。
玉川を渡った
「
優人は武器を出して手にすると、翔太を置いて河原へと駆け出していった。
その先にきっと野犬の群れがいるんだろう。
今度は人型に切り抜いた紙に取り出したペンで『犬』と記し、それを両手のひらで包んで空へ投げた。
「
手を合わせたまま目を閉じ、式神を通してあたりを確認する。
走る優人の前方に、野犬の群れが十数頭みえた。
「
式神を解除してさらに呪符を出し、野犬たちのいたあたりへと攻撃の符術を放った。
「
呪符が野犬の背中に貼りつき、一気に燃え上がる。
「
四枚の札を川に沿って投げ打つ。
野犬たちは火を消そうと川へ向かうも、翔太が繰り出した符術の壁に阻まれ、そのまま燃えつきた。
ほかの野犬たちは優人が対応している。
少し長めの持ち手に、やはり長めの刃がついた、
それを使うと風が刃のようになって
今日も優人はしなやかに舞うような動きで野犬たちを倒している。
すべて倒したのを待って、翔太は請負所へと式神を飛ばした。
確認と同時に先の請負所への連絡も頼み、少し遠回りをしながら
このあたりは緩急がそれほど厳しくなく、比較的遠くまで見渡せるし、進む距離も稼げる。
ただ、大きな街道があるから街も道も人が多い。
夕方近くなってやっと人の姿が減った。
「やっぱりこっちからも集まってきていたな」
「そうだねぇ……このあたりには賞金稼ぎたちは足を延ばしていないのかな?」
「どうかな……もう日が暮れる。夜になって動き出すのかもしれないぞ」
「そっか。それじゃあ、俺たちも宿をとって、仮眠してからまた探りにでようか?」
「そうだな」
中延で宿を取り、腹ごなしをしてすぐに眠りについた。
「……太……翔太、起きろ」
優人に揺すられて目を覚ます。
「ん……今、何時?」
「もう零時を回ったぞ」
「わっ! もうそんな時間?」
慌てて飛び起きて着替えをし、髪を整えた。
どこで誰が見ているとも限らないんだから、身だしなみはきちんとしておかなければ。
薄く細く、遠吠えがいくつも響いている。
翔太はまた式神を飛ばして周辺を探った。
「んん……この近辺にはいないな……」
「そうか。まずはこのまま品川へいこう。集結される前に少しでも片づけておきたい」
優人に言われ、翔太は
途中、
妖獣はまだいない。
「意外といるねぇ……どこからこんなに集まってるんだろう?」
「もともと野犬は少なくないからな。それに
「それにしたって多いよ。呪符作ったばかりなのに急速に減ってる」
このまま追いながら行くよりは、品川で一気に叩いたほうが呪符の減りが少ない気がする。
優人がいれば一振りで十頭くらい倒してくれるだろうし。
クサる翔太に優人は「またつくればいいだろ」と気軽に言ってくる。
「そんなに簡単じゃないの、優人も知ってるだろ! ったく……」
地図を広げて
品川といってもはずれのほうで、
「東都には入らないんだな。面倒がなくていい。それに畑が多いから囲いやすいかも」
「そうか。だったらこのまま真っすぐ向かおう」
「倒しながらじゃなくて?」
優人はすぐに返事をせずに顔を上げた。
数分、そうしていてから武器をしまい、翔太をみた。
「なんだよ?」
「駿人は
優人と賢人、駿人と守人は兄弟だという。
事情は
式神や手紙で知らせ合わなくても、互いの状況を知り合えるという。
「誰にだよ?」
優人は絆で繋がっているからだというけれど、翔太からみるとそんなものじゃあない気がする。
いくら絆があるからといって、どんになか離れていても互いの状況を知るなんて、普通はできようがないんだから。
「
「えっ! 深玖里ちゃん、
「いや、少し話しただけらしい。なにか
翔太は悶絶しそうになった。
今は離れているけれど、きっとまたすぐに会う、そんな予感が胸をよぎった。
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