第5話 旅行
お日様が昇ったけど、ママは起きない。
ねえママ「リード」持ってきたよ。お散歩行こう。
あ、としの匂いがする。僕の鼻はいいからわかるよ。ママ早く気付いて。としだよ。仲直り。一緒に遊ぼ。ママ、起きないなぁ。なんだかママが冷たい。
その後、沢山のママのお友達が入ってきたよ。白い服着た人達。青い服着た人達。
なんだか嫌。ねんねしてるママを無理やり動かそうとしてる。
僕はお部屋に独りぼっちになったよ。
寂しいな。ママ「病院」行ってチクッてしてもらってるのかな。
お尻、ちょっとだけ痛いけど我慢してね。
お日様が下の方に来たよ。お腹空いたから、また袋からご飯食べちゃう。
ドアが開いた。ママが帰ってきたのかな。でも、匂いが違う。
知らないおばちゃんとおじちゃんだ。僕、この人達も嫌。
噛みついたらママから怒られちゃうかな。
遠くに行って、「病院」じゃないところで、小さな冷たい箱に入れられたよ。色んな仲間が同じ箱に入って泣いてる。ママ、また旅行行ったのかな。
僕もママがいないから泣きそう。
お散歩って言っておじちゃんがたまに箱から出してくれる。「おさんぽくんれん」って言うんだって。でもすぐ終わり。ママじゃないからつまんない。
ご飯も美味しくないし、おしっこしてもそのまま。
知らない人がお顔見に来るけど、僕のお顔はあんまり見てくれない。
僕、可愛くないのかな。ママはいつも「マルは可愛いね」ってヨシヨシしてくれるのにな。
ママ、僕もっともっと良い子でいるから、早く旅行から帰ってきて。抱きしめてヨシヨシして。
電気が消されて何回目かな。退屈だな。
ママ、まだ旅行から帰ってこないよ。長いなぁ。
こんなに長いの初めて。ママがお迎えきたら美味しいオヤツいっぱいもらうんだ。
今日は、箱から出されたよ。良かった。ママがお迎え来てくれるんだ。
広いお部屋に連れてかれた。ここはどこ?
仲間も沢山いる。怖いよ。みんなプルプルってしてる。
ドアが閉まって、なんだかプシューって音がしだしたよ。もくもくの煙が出てきた。
ママ、料理失敗したのかな。
なんか息が苦しいよ。ママ助けて。ママ。ママ。
苦しいよ。みんな、寝ちゃって、僕も寝ちゃいそう。苦しい。苦しいよ。息ができない。
早くママに会いたい。早くここから出してママ。僕、もう立てない。ママ。
-fin-
動物は愛情がわかります。そして純粋です。
書くのはとても辛かったですが、少しでも虐待、自殺や殺処分が減りますように。
マルの物語 村崎愁 @shumurasaki
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