第4話 起きないママ

としとママが大喧嘩した。

ママは泣いてる。としは怒ってる。それくらい僕にもわかるよ。

いつもみたいに仲直りするよね?

「奥さんと別れるって言ったじゃん」

「準備があるんだよ」

「奥さん妊娠してるってなんなの?してないって言ったのに」

って。

ママ泣かないで。とし怒らないで。遊んでよ。

としは怒ったままお家から出て行っちゃった。でもまたすぐ来てくれるよね。

ママの涙舐めたら抱きしめてくれたよ。僕は嬉しいのか悲しいのかわかんない。

ママ、明日も一緒にお散歩行こうね。

お化粧の臭いも我慢するから。このままとしが来なくなったら、僕と遊んでくれる人がいなくなっちゃう。

僕のご飯、ママは用意してくれなくてお腹がすいたよ。

ママはベッドでずっと泣いてる。泣き終わったらご飯くれるかなぁ。

僕、良い子にしてるから。ママの隣にいるから、笑ってほしいな。


ママはまたカッターで手を切ったみたい。

お家は血がいっぱい。僕が舐めたら治るのにはねのけられちゃった。


ママ、朝になっても起きてこない。

お風邪ひいたのかな。ママ、ご飯食べたい。

お散歩行きたいよ。早く起きて。

お腹がすいて、ご飯の袋破いちゃった。ママが見たら怒るかも。

でもお腹が空いたんだもん。ママが悪いよ。

お日様が無くなってもママは起きてこない。お寝坊さん。

ため息が出ちゃう。ママ、またお日様昇ったら起きるよね。

抱きしめてヨシヨシしてくれるよね。優しいママ。

僕、もっともっと良い子にしてるからね。怒らないでお散歩行こうね。

起きたらすぐわかるようにママの隣にいるから。

ずっと一緒にいるからね。

大好きなママ。早く起きないかなぁ。


いつの間にか寝ちゃったみたい。ママはまだ寝てる。

お顔舐めても、お手手舐めてもママは起きてくれない。

なんでだろう。

僕、ママに何か悪い事したかなぁ。わかんないや。

としもお家に来ないから暇だな。

オモチャでいっぱい遊んでほしいし、お散歩行きたいし、美味しいご飯食べたいし、ママに笑ってほしいよ。

ママが起きなかったら「病院」に行って、チクッてしてもらうんだ。

すぐに寝ちゃうから大丈夫。怖くないよ。

僕、我慢できたもん。おしりの方が痛かったけど、すぐに治ったから。

早く「マル」って呼んで。僕嬉しくて尻尾が止まらなくなっちゃう。

ママには尻尾がないけど、嬉しい時とか笑ってる時は僕わかるから。


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