第30話 消えゆく者
堤は新薬の論文を発表したが、ガボウイルスを作り出した者として一部の批判は相次ぎ、堤は新薬の製造だけを同僚に託し首を吊った。ウイルスを作り出してしまった事、新薬がなかなか上手くいかなかった事に自責の念が押し寄せ、堤は限界だった。
縄に身体を預けると、身体は痙攣しその後呼吸が止まった。
三上は考えていた。もしかすると、ガボウイルスに侵されていない人間をガボ人間にさせる気なのだろうか。まさかとは思うが、それ以外に粘液の使い道は無い。ただでさえ、サイコパスの気がある二人だ。可能性は充分にある。
「今日やる事多いから帰っていいよ。お疲れ様」二人が事務所から出て行き、すぐに自衛隊と警察に通報した。
危なすぎる。もう異常の域を超えている。
こんな事ならば、仕事を一人でやるべきだった。
この件は「大量の殺人未遂」として取り上げられ、なつみと田崎は銃殺される事となった。
三上は更生をしてくれれば良かったのだが、かなり難しそうだ。手に負えない。
朝、事務所に来る前に二人は殺された。
銃殺した後、警察官は嬉しそうに報告をしてきた。
「ありがとうございました!これでガボが減るといいですね!」
「あぁ、そうですか…」警察官が帰ると事務所が実に広い。
「俺が二人を殺してしまったのか…」カーテンは閉めておらず、夜の夜景が輝いている。「俺は、俺のせいで、たくさんの人を殺してしまったんだ…」と呟き、家に帰宅した。
帰宅後すぐに順の遺骨を食べた。遺骨には少しのガボウイルスが潜んでおり、三上は死亡せずガボ人間となるようだ。
抵抗はない。順や玲子のように。
その晩は朝まで飲み明かし、腕を見ると赤紫に変化している。
「そろそろ順さんに会えますね。早く会いたいです…」
フラフラと風呂場に行き自分の自我があるうちに右胸をナイフで貫いた。黒い血液が風呂場に飛び散る。
「これがガボの気持ちだった、のか…そりゃ、殺してほしい、よね…」
三上の頭の中には順の言葉がぐるぐると回る。自我が消えていく。
ありがとうも言えなくなる人の気持ちも考えたまえ
約五分程で三上の心臓は停止した。
三上が目を開けると、そこは橋がある花畑の楽園のような場所だった。
順と玲子が笑ってこちらを見ている。
玲子は「根性あるじゃん」と前に聞いたセリフを言った。
「順さん逢いたかったです…!」
「私もだよ!早くこっちにきたまえ!」
三上は橋を急いで渡り、順を抱きしめた。
順は嬉しそうに受け入れてくれた。
ガボ人間は特効薬で数は減り、人を襲うことも減少した。そのうちガボ
人間も消えていくだろう。
三上の脳は完全に動く事をやめた。
アンデッドバスター 村崎愁 @shumurasaki
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