第29話 新薬
なつみと田崎が帰って来る。
なつみがシャワーを浴びている間に説いた。
「あのさ、間違えて殺したってなんなの?」敢えてゆっくりと田崎の口が開くのを待った。
「…僕、すごく虐めらてて…そいつを殺して自分も殺そうと思ったんです」
「うん」三上は腕を組んで、下を向いて話す田崎が自分に言葉が出るのを待つ。
「そしたら、そいつはガボに感染してて…。その時は楽しくて、嬉しくて、ずっとこの仕事に憧れていたんです…」楽しくて、嬉しくてやはり事情があるとはいえ、なつみと似ている。
なつみはシャワーから上がり「二人で何話してたんですか!?」と叫んだ。
「いや、明日の事。打合せ」三上は話を軌道修正した。
「そんなものいらないでしょ!私に田崎君は任せてください!」なつみは自身の胸をドンと叩いて見せた。
その頃研究所の堤はガボ人間の特効薬を作っていた。
実の所は、実験と称し偶然にもガボウイルスを作り出したのも堤である。
ガボ人間の遺体から少しのウイルスを抽出し、実験、研究を繰り返した。
堤は罪の意識から夜もほとんど眠らずに実験を繰り返し、変異する前はウイルスが死滅し、最後は生きているガボ人間を捕え薬を投与したところ呼吸が浅くなり人を襲うことが無くなりガボ人間として五分ほどで死亡するという代物だ。
活動停止することは大きな功績である。
もっともっと、と考えるのだがこれ以上の薬は出来そうにない。
「これでガボ人間はなくなっていくはずだ」堤は安堵し深呼吸をした。
政府から銃の許可がついにおりた。猟銃のような物を配布され、弾には特効薬が入っているようだ。
「今日も田崎君は任せてくださいね!」なつみはいつも通りの笑顔だ。
窓から観察していると、田崎にゆっくりと猟銃の使い方を説明しながら殺している。
殺した後なつみと田崎は遺体となったガボ人間に何かをしている。一体何をしているのだろうか。事務所は三階で良く見えない。
後から聞いてみよう。田崎も飲み込みが早い。猟銃で安全に次々と殺してゆく。
ただ、ガボウイルスに感染したての人間は見分けがつかない。どうしたらいいのだろうか。きっちりと考える余地が必要だ。
いつもよりも早く終わり、二人が戻ってきた。黒い血液は飛び散ってはいない。
「ただいまでーす!やっぱり六刃がいいですねー!」便利だが不都合でもあるらしい。
「お疲れ様。さっきさ、死んだガボに何してたの?」
「あー!いや別に「粘液取ってました」なつみの発言に被せて言う。
「えっと、なんのために?」
「ガボは少なくなっていくだろうし、それじゃつまらないから」と田崎は床を見つめった。
理解が出来ない。少なくなる?つまらないから?
それと粘液を採取するのに何の関係があるのだろうか。
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