第24話 凪

事務所に出勤するとなつみが薙刀のような物を二本ソファーに立てかけ待っていた。それは本当に簡易な物で、箒の柄にナイフを着けただけだ。

「これって、どうやってナイフと着けてるの?」じっくりと観察する。

「もちろん接着剤ですよ!今度の休みにはちゃんとした物作ります!」すぐにでも柄とナイフが取れそうで、箒の柄も古びていて実に不安だ。

「一応さ、ナイフと六刃持って行かない?」三上の不安さがなつみにも伝わっているようで幾分残念そうな顔をした。

「これ、何て名前つけようかなぁ…」なつみも自身の作った物を観察している。

「もう薙刀でいいんじゃない?」

「つまんないなぁ、ひねりが無いですねー。あ、凪なんてどうです?風みたいな字の!」片手を握り掌でポンと叩く仕草をする。

結局は凪と決まった。

三上は腰袋にナイフとなつみは六刃を収め、凪を持って戦いに出た。

確かに普段よりもガボ人間から粘液が出ている。刺せば飛び散ってしまいそうだ。

「どりゃー!」凪を持ったなつみは叫んで突進する。

案の定凪はガボ人間の胸に触れただけで、カランと音を立ててナイフと箒の柄が分離した。

三上は急ぎ凪を投げ捨てナイフを取り出し粘液を避けながら刺し殺す。

これには思っていたよりもかなり体力を使う。

刺した胸から粘液が飛び散る。顔にはマスクをしているが、もし怪我でもしている箇所でもあり、触れたら感染するか死亡してしまう。

なつみも壊れた凪を捨て全部で十六体を殺し終えた。


「すみません…。こんなに脆いとは…」申し訳無さそうにに呟く。

「いや、大丈夫。想定内。今日大崎行く?」三上はパソコンを立ち上げる。時刻はやはりいつもよりは遅く三時だったがまだ戦える時間だ。

「ん-今日はやめておきますよ。帰ります…」なつみは肩を落として事務所から出て行った。

一人では第六形態に進化したガボ人間と戦う自信がない。三上も帰り支度をし、帰路につく。


家に帰り、持ち帰ったナイフと逆さにした箒の柄を合わせてみる。ガムテープで巻いただけの方が強度があるのではなかったのかと頬が緩んだ。


翌日七時四十分に出社すると、電話が光っている。なつみは出社しているが電話には反応しなかったようだ。

「これいつ鳴ったの?」三上がバッグを置きながら問うと「んー七時半くらいですねー、。あ、ガボが二体いますね」となつみは窓から首を出し興味が無さそうに返事をした。

「ちょっとかけ直すね」

「はーい。早めに切ってくださいねー」は置いておいて、生きている人間には興味を示さないのかと不思議に感じる。

四コールで電話を切ろうとした瞬間に出たのは物静かな若い声の男だった。

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