第23話 反省

翌日になり、七時に出勤するとなつみは来ていなかった。

八時半、警報が鳴りだしても出社してこない。

かぁ。まぁあんな事があったら来にくいですよね…」順の机に話しかける。

仕方なく一人で戦いに出て、三上は十一体のガボ人間を殺し終え事務所に戻ると鍵が開いていた。

ドアを開けるとなつみがガスマスクを被り、腕を組み三上を真っ直ぐ見ている。

「なつみ、さん。遅かったね」何と言っていいのかわからない。来るとは思わなかった。

「論文調べてたら遅刻しました。空気感染するように進化したみたいですよ。第六形態です」

やはり不機嫌だ。

「よく調べたね…」思わず床を見る。

「三上さんがよく調べないからでしょ。不用心すぎますよ」まるで母親に叱られているようだ。

「すみません。明日から気を付けます…」なつみに深く頭を下げた。

「さて、と。今日はマスク無いでしょ?私大崎行ってくるんで」三上は頭を下げたまま、「すみません。気をつけてね」としか言えなかった。


事務処理は一日の総合を届け出る。なつみが何体殺してくるのかわからないのでする事がない。

なつみが大崎に言っている間に順の机に話しかける。

「順さん僕、人雇うとかまだまだ無理そうです…」順の机の上は散らかったままだ。

机に顔を近付け大きくため息をついた。


二時間もしないうちになつみは上機嫌で帰ってきた。

「今日は九体です!全部殺しちゃいましたよ!まだまだ増えないかな~!」

ガボ人間を殺すのが余程楽しいようだ。

「お疲れ様。ありがとうね」とパソコンを立ち上げ総合数を申請する。

「あとですね、面白い文がありまして、確認してきました!普通に粘液が飛び散るみたいですね!」何が面白いんだろうか。危ないだけだ。

「新しい剣みたいなの作りません?」三上は考えもしなかった。

近距離は危なすぎる。今や距離を置いて殺す方が安全だ。

「でも俺そんなの作れないよ?」

「私が明日作ってきます!まぁ棒に包丁つけるみたいな簡単なものですけどね」

なつみは自由研究でもするように楽しんでいる。

「上手く使いこなせますかねー?今までずっと近距離だったんでー!」

笑顔で実によく喋る。

「そうだね。ちょっと不安だけど任せちゃおうかな」三上は頭を掻いた。

「慣れてきたら銃剣も視野に入れましょ!」銃は許可が降りるだろうか。今までは許可が降りなかった。だが第六形態に進化した今はどうなのだろう。

「シャワー浴びたら帰りますね!」

直ぐにシャワー室に入って行った。昨夜は本当に酔っていて、記憶がないだけかもしれない。


帰宅をしようと電車に乗るとほとんどの人間がガスマスクをつけていた。

異様な光景だ。つけていない人間は論文や、ニュースを見ないのか、と自分も含め思案をする。

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