第20話 休日

電車に乗車すると時刻夕方の四時だった。

本音は八時近くまで仕事がしたい。先に三上は降車駅に着きそうな所だった。

「やっぱりシャワーないときついですねぇ。見られちゃう」なつみは袖で顔中を拭く。「うんそれが問題」三上も顔を服で拭いた。臭いはとれない。

周りの人間がこちらを見ている。

「お疲れ様。また明後日ね」挨拶をすると

「おつかれっす!」と返り三上は先に降車した。明日は日曜だ。

久々の休みである。家に持ち帰る事務処理を終えたら明日は何をしよう。



なつみは明日何をするのだろう?気にはなるが何も聞かなかった。

帰宅し、シャワーを浴びゆったりとした服に着替え、スマートフォンのニュースを見る。

今まで各地域のガボ人間の生態は気にしていなかった。

イギリスで論文が発表されている。「空気により感染する場合もある。地域ごとにガボウイルスは変化する。………」

とは初耳だ。免疫同士で感染するわけではないのか。政府から配られたガスマスクを装着して戦わなければいけないのではないのかもわからない。

明後日はなつみに聞いてみよう。何か知っているかもしれない。

暫し休みを取っていなかったので、ベッドに横になると緊張の糸が切れたように眠りについた。


翌日は午前十時に目が覚めた。頭が働かない。

「今日は何もせずに過ごそうか。母さん、順さん」と呟き、またもベッドに沈む。

とにかく眠りたい。眠ればもしかしたら夢で母や順に会えるかもしれない。

残念ながら夢は見なかったが熟睡は出来た。

三上はショートスリーパーで普段二~三時間くらいしか眠らない。

だが真剣に疲れていると熟睡してしまう。それは良い事だが。

なつみが脳裏に浮かぶ。笑顔と元気があるところが順と少し似ている。

それはなつみも母と似ているという事かと思い、目を閉じたまま笑った。

気が付けば再び寝ていた。


「順さん、おはようございます。ちょっと寝すぎちゃいました」照れながら空に声をかけた。

最近はほとんど母にではなく順に声をかけている。

それほどまでに順の存在は大きかったのだ。認めたくはないが今や母の仇より順に認められたい。

順の骨壺は一週間前に家に持って帰って母の仏壇に据え置いていた。大きく伸びをし、ゆっくりと歯を磨き顔を洗う。

風呂の湯を溜め一時間ほど浸かった。頭が次第に鮮明になってゆく。

あぁ、順さんはもういないのかと思考が巡る。今更だが涙が零れそうになった。

やはり三上は順を知らず知らずのうちに愛していたのだろう。

そうだ、なつみは今何をしているのだろうか。






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