第19話 出張
またもなつみは即刻十八体を一人で殺して事務所に帰ってきた。
「お疲れ様。隣の駅にバスター入ってないところがあるんだけど、今日、そこに行ってみない?」なつみは笑顔だが更に花が咲いたように笑った。
「へえ!珍しいですねー!行きますよ!殺してないと暇なんで!隣の駅って、もしかして大崎ですか?」勘は順と同じく鋭い。それに殺してないと暇。とはサイコパスではなく、ソシオパスなのかもしれない。
「顔だけ洗いますね!一応レディーなんで!」と心を躍らせるようにシャワー室に入ってゆく。「よくわかったね。大崎だよ、多いのかな、少ないのかな…?」三上がつぶやくと「きっとバスターが入ってないって事は少ないと思いますよ!残念だけど…」と流水の音と共に返ってきた。
タオルで顔を拭きながら「あー三上さん知ってます?地域によってガボの種類?生体?って少し違うんですよ!」眼鏡はかけていないが、眼鏡をかけ直す仕草をする。
「へえ、なつみ先生が居たところのガボはどんなんだったの?」
「うんと、粘液はここのより濃くて、口からの泡は黒かったですねー!」地域によってガボ人間は少し変化をしている。ウイルスが多少変わるのだろうか。
黒血液が落とされ、綺麗な顔に変わったなつみは六刃を磨き直し、事務所を出た。
「三上さん車持ってないんですか?」犬のように舌を出し暑そうに駅まで歩く。
「ごめんね。あるはあるんだけど、前は終わったらプチ宴会してたし、電車で事足りるからさ」約二十分で駅に着いた。それから乗車し五分で大崎に着き電車を降りた。
「あっつー…。これ頑張れますかねえ、夏生まれだけど暑いの苦手なんです」なつみは三上を見ず、独り言のように話す。
「なつみさんなら大丈夫だよ。ていうか俺も頑張るし。」と言う三上に対してなつみは深くため息をついた。
まだまだ三上は未熟なのだろう。玲子、順、なつみにはこれから三年経っても敵わない気がする。もっと強くなりたいし少しでも役に立ちたいのではあるが。
駅には駅員しかおらず、歩いている人間はいない。異様だ。事務所の前の街では普通の人間が少なからずは居た。ここにも警報が鳴るのだろうか。
駅から出て外を見渡すとガボ人間が三体いた。今日はナイフを二本使う練習をしてみようと思いナイフを二本持ってきていたが、なつみが即殺しそうだ。
「やっぱり少ないなぁ…」
「なつみさん、今日俺、二体殺していいかな?」なつみは、えーっ!と残念がった。
「ちょっとね、練習」三上は恐々聞く。
「わかりました!じゃああのガボは私が殺しますんで後はよろしくー!」なつみは一体のガボを指さした。五十歳くらいの女性だ。なつみは老若男女大人子供遠慮なく殺す。
こちらのガボ人間は目が紫で手に力が入っているようだ。
やはり謎だ。地域によってウイルスが変異するとは。順やなつみがしていたように、一体のガボ人間の右胸を抉り血を避け、左にいるガボ人間をもう一つのナイフで引き裂いた。一体のガボ人間を秒で倒したなつみはそれを見て拍手をする。
「三上さん慣れてますねえ。いけるじゃないですか!」
三上はテストで百点を貰った気分になり、照れながら頭を掻いた。
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