第18話 三日酔い
「昨日はありがとうございました…。頭痛いです…。今日は一緒に戦いません…?」なつみは気持ちが悪そうで、三上も頭痛が酷く、今にも吐きそうだ。
「うん…。俺も自信ないけど…」
先日の記憶はあるが話を蒸し返す必要もないだろう。
二人でよろよろとナイフと六刃を磨き、警報が鳴るまでなつみはソファーに倒れこみ、三上は机に突っ伏していた。会話は無い。まるで地獄だ。
警報が鳴り響き外に出るとなつみが電信柱に向かって嘔吐した。何体いるのかも数えていない。ガボ人間はなつみに近寄ってくるが吐くのに必死で気付かない。
三上が庇う。だが血液を避けるまでの力は無い。目口に入るギリギリの所で顔に血液が飛ぶ。どうやら運が良いらしい。
「すみません…頑張ります…」吐き終わり、なつみは潤んだ目で口元を袖で拭きゆらりと立ち上がり、揺れながら三体を殺した。
三上も吐き気を堪えて四体を殺し、残り八体のガボ人間を残し、肩を支えあって事務所に帰る。
「情けないです。呑みすぎました…ウエッ…」なつみはトイレに駆け込んだ。
帰ってきたなつみに「いや、呑ませ過ぎたよ…ごめん、俺も吐きそう」と三上も続けてトイレに駆け込み嘔吐した。吐きたくとも胃液しか出ずに苦しい。先ほどのなつみの気持ちが痛いほどわかる。
その不快な症状はほぼ三日間続いた。
三日酔いの間ガボ人間はほとんど殺せず、日に日に数が増えているように感じる。
四日目の朝になり生まれ変わったかのようななつみが事務所の前で待っていた。
「さー今日は今までの分バンバン殺しますよー!」右手を大きく振り上げた。
三上は悪心が残っていたので「今日もお願いしてもいいかな?」と頼むと「オフコース!」と笑顔が返ってきた。
これが若さの違いかと情けなく感じる。貯まっていた事務作業に没頭し、なつみは二時間で二十体殺して、元気にピースサインをしてきた。
薬局に寄り胃薬を購入し、帰宅しすぐさま飲む。酒を呑んだ翌日にはそうするべきだったのだが早くベッドに沈み、動きたくなかった。
三十分もすると幾分と胃が軽くなり、嘔吐感が減ってくる。
ベッドに横たわり深呼吸をしつつ目を閉じた。なつみが来てから仕事が終わるのがとにかく早い。ふと、まだアンデッドバスターが手を出していない地域が近場に残っているのではないかと考える。
起き上がり、パソコンを起動し詮索してみると一部分だけ電車で一本ほどの距離にアンデッドバスターが入っていない地域があった。
「明日はここにも行ってみるか…」と思い見る。そこにはガボ人間が多いのか少ないのかはわからないが、恐らくなつみは喜ぶだろうなと想像すると自然と笑顔が零れた。
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