第17話 経緯

なつみを雇用してから三週間が経ち、なつみ一人で戦う日も多くなった。

なつみが戦いに出ている間、履歴書を見ると明後日が誕生日だ。

帰る際に酒を買う。成人になったのだから乾杯するくらいは良いだろう。

初めだから余り呑めないだろうし、女性だから甘めの軽い酒がいいだろうか。

結局は自身のビールを六缶とティフィンという紅茶のリキュールを購入した。

二日共なつみが一人で戦いに出た。順の机の引き出しを開けるとクラッカーが入っている。これを使おう、サプライズだ。喜んでくれるのだろうかと胸が高鳴る。

三上は女性経験も少なく(過去の交際相手は三人)、サプライズ等したことが無かった。

外を見ると最後の一体をなつみが刺し殺している。ドアの前でクラッカーを持ち待機した。

黒い血液を顔につけ、袖で拭いながらなつみが帰ってくる。

「いやー楽しかったですよー!」と言うと同時にクラッカーを鳴らした。

なつみは「ギャア!」と叫び、袖で両頬を隠した。「なんですか?!危うく三上さんを殺してしまうところでしたよ!」

「誕生日おめでとう!いよいよ成人だね!」三上はなつみより嬉しそうだ。

「あ、忘れてました!ありがとうございます!」と照れ笑いをする。彼氏等はいるのだろうか。いればもちろんそちらを優先すべきだ。

「あのさ、もし暇ならこれ吞んじゃう?」おずおずと冷蔵庫からティフィンのリキュールを取り出した。

「あーこれ好きなんですよ!」なつみの顔は浮足立ち笑顔に変わる。

「未成年は呑んじゃ駄目って知ってる?」三上はなつみの笑顔に幾分安堵した。

「はい!不良だったんで!呑みましょう!」いつもよりも機嫌がいい。サプライズは成功したようだ。

三上もビールを取り出し乾杯をする。なつみはリキュールをロックでちびちびと呑んだ。


酒が回ってきたようで、なつみは頬を赤らめ敬語を使わなくなった。

「美味しいー!三上さん最高!」まるまる一本無くなったところで「三上さんのビールも呑んじゃおっと」足をふらつかせながら冷蔵庫までビールを取りに行き「カンパーイ!」ともう何度目かもわからない乾杯をする。

三上もかなり酔いが回っていた。

「あのさぁ、親父殺したってなんなのー?」なつみがぶれて見える。

「あー…心の準備はいいー?」笑顔のままだ。内心ホッとし、「はい!」と返事をする。

「親父から、ずっと虐待されててー、下の方ねー」ケラケラと笑いだした。

三上は少し酔いが冷める。「で?」

「ガボが流行りだしてー親父をガボに感染するまで外に出してー、色々言い訳してねー。そしたら殺人になんないでしょ?んで完全に変わったところを刺し殺したのー。あはは、楽しいー!」なつみは腹を抑えて笑い出した。

「その時はバスターじゃないよね?」残りのビールを飲み干す。

「計画立ててバスターに入ってからー!用意周到でしょー!あはははは!」

「そんなに嫌いだったんだ。わかるけど」三上は実に涙もろい。壮絶だったのだろうと想像するだけで泣けてくる。

鼻をすすっていると「泣くなって三上さんー過ぎたことだってー」と逆に慰められた。

翌日は流石に二人とも一時間ほど遅刻をした。


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