第14話 生体

「なつみさん、後ででいいんだけどさ、ちょっと聞きたいことがあるんだ」

今日は調子が良い。三上は二十一体のうち十二体を殺していた。

「今でもいいですよー!私、失敗しないので!おりゃ!」流行っている医療のドラマの名台詞の真似をし、ニヤリと笑い三上を見つつガボ人間の右胸から左胸へとナイフで引き裂く。

「いや、ガボって眠るのかなって、さ。朝出るから」三上も右胸を抉る。

「ほう、抉るとは珍しいやり方ですね!ガボは眠りませんよ!ただ太陽光で活動的になるらしいですがねー!」なつみは何度もしゃがみ込みアキレス腱を切っていく。

残り七体全てのガボ人間のアキレス腱を切り、動きを止めた。

「あのさ、なんで生きてる人間を判別できるの?」三上は動けなくなり、小学校低学年の子供と見られるガボ人間の上から胸を突き刺す。抵抗は勿論あるが仕方がない。

「あー!それは視覚と嗅覚ですよ!仲間を増やしたいのかな!ってそんな考えガボにはないでしょうけど!」なつみは次々と余裕を見せながら刺し殺していく。

普段より早く退治が終わった。


シャワーから上がったなつみは「お疲れさまでした!抉る。勉強になりました!パクってもいいですか?」と笑う。

「どうぞどうぞ。ていうか俺、なつみさんより全然短いし慣れてないから」少し照れながら元玲子の席に座りパソコンを起動し事務作業を始めた。

「へー、色々あったんすね!ってあれ?いつの間に机増やしたんです?」首を傾げる。

「なつみさんの席ないから、面接の後すぐに注文したんだよ。ま、使う事あるかわからないけどさ。鍵、業者に渡しておいたから戦ってる時届いたんだろうね」

「不用心ですねぇ。ソファーの方が落ち着きますよ。それにこのも好きです!」と順の椅子に乗ろうとした。

「あ、ちょっとそれは辞めて。ごめんね」三上は回転椅子を自分の横に引き寄せた。

順がまだ乗っている感覚がするからだ。

なつみは理解できないという顔をして何かを考えている。

「三上さん、何があったか知らないけどガボはガボですよ?」恐らくなつみは多少分かっている気がする。

「うん。頭ではわかってるんだけどね。まだほら、よく慣れてないからさ」思わず天井を見た。順はこれを見ているのだろうか。それとも夢の通り天に昇ってしまったのだろうか。

涙を堪え、目が充血する。「なんか疲れたから俺も今日は早く帰ろうかな…」

「今日遅刻したじゃないですか。三上さん仕事きっちりしてくださいね。じゃ、私帰りますんで」と告げ一つも疲れていないようななつみはバッグを持ち「明日遅刻したら給料アップしてもらいますよ!」と告げ帰ってしまった。

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