第12話 なつみ

事務所に入り茶を入れていると、なつみは順の遺骨を眺めていた。

「殺られちゃいましたかぁ…」と呟くが三上は敢えて無視をする。

「志望動機は?」三上は茶を目の前に置き、目の前に座った。

「実は、前もバスターをしていたんです!引っ越しで辞めちゃいましたがやっぱり楽しくて」とは不思議だ。

始めは三上は胃が痛んだものだし、未だ死に際のガボ人間には慣れそうにもない。

「そっか。いつから来れそうかな?」テーブルに置かれた履歴書に目をやると三上よりも六つ年下の十九歳であった。

アンデッドバスターは命を懸ける仕事だ。サイコパスの気があるのかと思いを巡らす。しかし即戦力にはなりそうだ。

「今日からでも大丈夫です!というか早く殺りたくて」なつみは照れくさそうに笑い、幾分長い袖で顔を隠した。

「じゃあ今日からお願いしようかな。僕は三上。よろしくね」握手を促すと力強く返してきて、ブンブンと振る。

警報が鳴り響いた。なぜガボ人間は朝出没するのだろう。夜は人間同様、睡眠を取るのだろうか。ふと考えているとなつみは「あの、ナイフを二本使ってもいいですか?」と頭を掻きながら聞いてきた。

目が玩具を与えられた子供のように輝いている。

「うん。どうぞ」順の使っていたナイフを一本、玲子の使っていたナイフを一本渡した。独占欲だろうか、本音は順のナイフは誰にも使って欲しくない。

「じゃあ行きましょう!あー楽しみだなぁ!」と、大きく伸びをする。

早々と歩くなつみの後ろに黙ってついて行き、街に降り立った。今日は十五体ほどだ。

なつみは素早くしゃがみ込み、一体のガボ人間の足のアキレス腱を切り、もう一本のナイフで右胸を刺した。

玲子や順の比較にならないくらいに素早い。

呆気に取られていると「三上さん!危ないですよ!」と笑いながらガボ人間の手首を切りまたも右胸を刺し、殺す。

どうやらなつみの戦い方は、初めに傷をつけ弱った所で的確に刺すようだ。

黒い血液がなつみの顔に飛び散りそうなところを瞬間で避ける。「あっぶねーな!目に入るところだったー!」なつみは本当は口が悪いのかもしれない。


三上は六体、なつみは九体殺して事務所に戻った。申し訳なく、情けない気持ちになる。

「あースッキリしました!楽しかったー!」と頬に着いた血液を袖で拭いながら笑った。「で、ですね。あの、採用かどうかは…?」ちらちらと三上の顔を覗く。

「もちろん採用だよ。若いのにすごいね。何年してるの?まさか三年?」

なつみは両手を伸ばし「やったー!えと、十六の時に親父殺したから三年ですね!ガボが流行ってすぐですよ!」と笑顔は全く崩れない。普通はトラウマになるのではないだろうか。

「あ、一応シャワーあるけど入って帰る?」詳しく聞いてはいけない気がする。

「ありがたいです!前の所は無かったから!」と機嫌よくシャワー室に入って行った。

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