第7話 記憶

明くる朝ガボ人間のが事務所に来ていた。

「何かあったんですか?」三上が聞くと順は「色々あるんだよ。退治する仕事だからね」と静かに答えた。

それから一週間が経ち、その間、数が多かろうと少なかろうと順が共に戦う事は無かった。

まるでスイッチが切れたようだ。そしてテンションは低く、表情は暗いままだった。

三上はその件について触れなかったが、気になって仕方がない。


その後暫くが経ち、ようやく元の順に戻ってきていた。

「三上君!今日は一緒に行くか!」朝の順の笑顔に安堵する。

「何体ですか?」

「うーん、恐らく二十は居るだろうな!多いからね!」順はナイフを磨きながら言う。笑顔ではあるが三上の顔は未だ見ていない。待中に警報が鳴りだした。

時間が解決してくれるのかはわからないが、嬉しい一歩である。

「いざ!出陣だ!」とナイフを手渡され街中に行く。ぴったりと二十体のガボ人間が徘徊していた。順の勘は実に鋭い。

順は即刻二本のナイフで二体のガボ人間を殺した。まるで踊っているようだ。

玲子同様に嬉々として見える。三上も負けずと一体一体と殺してゆく。

一体のガボ人間を倒そうとし顔を見ると、昔世話になった近隣の住人だった。

他人事では無い、と暫し呆けていると「三上!何をしている!」と怒鳴られ近隣の住人は順の手によって殺された。

「…友一…」息を引き取る前にガボ人間が話す。三上の下の名は友一だ。

おかしい。ガボウイルスに侵された人間は記憶も、人間であるという自覚も無いはずだ。またも呆けていると最後のガボ人間は順が始末し「今日は二点だな三上君」と背中で語った。さすがに息が上がっている。

「すみませんでした。あの…」三上は問いかけたが返事は無い。怒っているのだろうか。三上は三体しか殺せなかった。

事務所に戻るといつもシャワーを勧める順が「帰っていいよ」と小さな声で囁く。

すごすごと事務所を後にした。

帰りつくとスマートフォンのバッテリーが切れている。当然だ。昨日充電をしていない。どうもスマートフォンが無いと時間が経たない。スマートフォンを充電器に差し込み母の仏壇の前に座った。

「母さん今日は駄目だったわ。ガボにのおばちゃんが居てさ」

はあのガボ人間だ。なぜ三上の事がわかったのだろう。

もしかしたら一部分の記憶は残るのかもしれないと仮説をたてる。

もしそうだとすれば、殺すのに尚更と抵抗が出る。今までは「人ではないもの」と無理に思い込んで殺していたのだ。

「明日順さんに聞いてみるわ。おやすみ母さん」と部屋の電気を消した後も暫く考えていたがいつの間にか眠りについていた。


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