第6話 感染
シャワーからあがると、またしても順がビールを持ってくる。
どうやら事務所の端にある小さな冷蔵庫は酒専用らしい。
乾杯をし、どんなガボ人間だったか等を話して帰路に着く。
家に着き、今度は風呂に湯をはりゆっくりと入った。
昨日あまり眠れなかったせいか、ベッドに横になるとスマートフォンの充電もせずに眠りにつく。
その頃、順と玲子はワインを呑みながら泣いていた。
「今まで楽しかったね順」二人の涙はポロポロとではなく、止まらない蛇口の様だ。
「うん、二人でガボ倒す仕事しよーってさ、最初は大変だったね」順は鼻水を服の袖で拭った。
「大丈夫だよ。順ならこれからもやっていける」玲子は順の手を強く握った。
「私、どうしよう。あいつが憎いよ」床を見つめる。
「いや、いつこうなってもおかしくなかった。あのガキと続けて順」玲子と順は三上の三つ上である。二人の手は繋がれたままだ。玲子はあの時三上を庇い、ガボ人間から噛まれた。ガボ人間から引っかかれるか噛まれると約八時間後にはガボ人間になるか死亡する。
結局朝まで二人で飲み明かし、個室に入り肌が赤紫に、目が赤くガボ人間に変容した玲子を順は殺した。
ワインの跡片付けをした。
順の頭が痛む。それに涙が止まらない。何度も涙を拭う。
八時前になり三上が来た。
「おはようございます。あれ?玲子さんは?目、どうされたんですか?」
順の目は大きく腫れている。
「玲子は辞めたよ。目はものもらいだ。」いつもより明らかにテンションが低い。
「えっと、どうされたんですか?」順は三上を見ない。三上は不穏さを感じる。
「玲子が辞めたからね。寂しいだけだよ」椅子をくるりと回転させ、外を見た。
「今日は少ないから。六体しかいない。もう一人でできるか?」何だか声が震えている。「頑張ります」それだけを告げた。
「ナイフ、そこの机。行ってこい」こちらを見ずに指を刺す。机の上には黒く塗れたナイフがもう一本ある。
三上はなぜか怒られている様な気分になり、早々に綺麗なナイフを取り外に出た。
次々とガボ人間を殺してゆく。一瞬引っかかれそうになったが、上手くガボ人間の脇腹に避け右胸を刺した。殺した後のガボ人間は見ないように努めた。
ぐにゃりと倒れたガボ人間が最後の力なのだろうか、足をつかんでくる。
もう一体のガボ人間が襲い掛かってきた。焦り、右胸を刺して殺す。
最後の一体を殺し、事務所に戻ると順は酒を大量に呑んでいた。
今回はカシスオレンジで、乾杯は無いようだ。
「もういいよ。帰っても」と順は静かに言った。
何か悪い事をしたのだろうか。「お疲れさまでした」三上は返事を待たずにすぐさま事務所から帰路に着いた。
家に帰り、黒く汚れた服を洗濯機に放り込む。
玲子がそうしていたように、慣れなければ。
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