第3話 再び
街中にいるガボ人間を片付けた後、玲子は事務所のシャワーで血と汗を流した。
そのためのシャワー室だったのか。
「お疲れ様ー!何体?」順はパソコンに向かって語りかける。
「二十二体」玲子が髪を乾かしながら不機嫌に答える。
「オッケー!申請しなきゃね!ガボ様様だね!三上君は何体?」と笑った。
「二体です。すみません」頭を下げるが順は見ていない。
「上出来だよー!大体始めは刺せないから!給料に反映させるからどんどん倒してね!あ、服そのままで帰れる?」ちらりと三上を見る。服はたった二体なのに黒い血液で塗れている。
「はい。お疲れ様です。」申し訳ない気持ちになり再び頭を下げた。
「うん、じゃあ今日は帰っていいよ!お疲れ!」順はパソコンから離れ三上の背中をまたもひと叩きし、帰宅を促された。
帰宅し、いつもより丁寧に身体を洗う。トップスはゴミ箱に捨てた。
夜になりベッドに横たわるが、人を刺した感覚が張り付いて眠れそうにない。
人はあんなにも柔らかいのか。それとも、ガボ人間になると柔らかくなるのか。
明日も明後日もずっと続けていけば慣れていくのだろうが。
早く慣れたい気持ちと、もうやりたくない気持ちで頭が乱雑になる。
起き上がり、母の仏壇の前に座る。
「母さん、俺少し頑張ってみるわ」独り言は空を舞い消えていくようだ。
被害者が居なくなればそのうちガボ人間も居なくなるだろう。だが、ガボ人間がどれだけ存在しているかはわからないらしい。スマートフォンでニュースの欄を確認すると、「二十二体のガボウイルスに感染した遺体が…」と表示されていた。
少々だが、人の役には立てている。それに母の仇。
同時に、こんなにも困難な仕事を女性二人だけでやってきていたのかと感心もする。
雇用した人間が続けられない気持ちも理解出来る。
いつの間にか仏壇に突っ伏して朝を迎えていた。当然だが身体が痛い。
憂鬱な気分だ。しかし前日よりもガボ人間を殺さなければと決意し、今日は黒い服に着替える。
出勤すると、順と玲子はギョッとした顔をした。
「来てくれると思わなかったよ!」順は再び三上の背中を叩く。
「へえ、根性あるじゃん」玲子はスッと目線を外した。
「今日は順さんとですよね?」
「うん!頑張ろうね!三上君!」順は妙に嬉しそうだ。いや、元々そういう性格なのかもしれない。
今日は順も全身黒い服を着ている。窓から外を見るとガボ人間が姿を現せ始めた。
「そろそろ行くよ!はいナイフ!」順からナイフが手渡される。
持ち手にはセロハンテープで三上と書いてあるナイフだ。
今日こそは多く倒してやる、と決意を固める。
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