第11話 出会ったなら
「お前ってバカだな」
あいつの無神経な笑い声が
ダンボールだけの何もない部屋に響く。
「御曹司が
こんなセキュリティのかけらもない部屋に
引っ越すなんて
本当昔から飛んでるやつだな」
俺も笑った。
「お前の母親も
お前が死ぬまで好きな事をさせたいだなんて
本当意味わかんねぇよ...」
静けさが、部屋の時を止めた。
「それで空のしたい事、次、何?」
俺は
「仕事」
と答えたら
このアパート中に響く笑い声で
「やっぱり俺、お前を尊敬するわ」
と言った。
「お前のバイト先を紹介してよ。
日払いだろ?」
と言うと
「御曹司がバイト?
日払い?
お金なんて使いきれないほどあって?
バカにすんなよ」
そう言って
戯れてくるあいつに
目が覚めても今日がまた来る気がした。
この時間が好きだ。
生きている気になる。
「なぁ...俺が」
そう言い出すと
あいつは突然、あの日の雨のように大粒の涙で
「言うなよ、聞かねーぞ」
と呟いた。
「言えるうちに言いたいんだ。
もし俺が、俺でなくなりそうになる前に
ちゃんと、教えてくれよな。
最後に住みたい場所、決めているだ。
また引越し手伝えよ」
あいつは
「お前のそうゆうところ、
嫌いだわ」
と言って
くしゃくしゃの顔で、はにかんだ。
もし俺が、
この先
俺がやりたい事の一つの
本当の恋を知ったのなら
こいつに一番に相談しよう。
出会うべき人に出会える気がした。
今なら...。
俺の物語の
俺のわがままだって事、
あいつなら責めない気がして...。
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