第9話 理由


このダンボールを捨ててはいけない気がして

思わず

そのダンボールを車に積み直し


事務所へと戻った。


事務所に着くと、所長が

「おつかれさん

これは今日の分

残りは振り込み」


と言ってお金を渡した。


「ありがとうございます。」

そう言うと所長は

「お前はいつまでこの生活をするんだ?

こんな仕事しなくても

実家に帰ればお金になんて困らないだろ」

と言って笑った。


わたしは持って帰ってきたダンボールと

手紙を所長に渡し

「先輩のツレの引越しだったんですよね?

これ預かった手紙と、

多分大切な物です」


と言うと

白い封筒に触れる手が小刻みに震えていた。


中身を確認すると所長は

先輩以上に嗚咽をもらし


「これはあいつがお前に渡したのか?」

と言った。


「中身を確認してから捨ててって渡されて。」


時が止まった気がした。

所長の嗚咽が響く空間。


「空は元々、ここでバイトしてたんだ...」

意外な言葉と共に


なんでわたしにこれを託したのか

戸惑いと違う、怒りが湧き起こりそうになると


「お前...空を本当に知らないのか?」

と所長が言った。


ほら....

やっぱり時が止まった気がした理由が

そこにあった。

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