第2話 太陽
「えっ?」
空は、言った。
私は、空の前にもう一歩、近付く。
「あなた、空でしょ?」
手を伸ばしたかった。
本当はずっと、そうしたかった。
何もいらないって思ったのは、
空がいたからなんだって、
今度会ったら伝えたかった。
全部捨てたいのは、
私を纏う鎧だから。
「空?....これ落とし物...」
彼は、空がくれたハンカチをそっと渡してくれた。
思わず、そこにいるはずのない空を
彼に重ねた自分が、許せなかった。
「ありがとう。」
そう伝えて、何が自分の望みなのか
簡単にわかってしまう自分が嫌いで
声が凍りつくのが分かった。
彼は、私を見つめ
「太陽です」
と笑って言った。
ほらと指を刺す方向には
厚い雲の隙間から、鬱陶しそうに顔を出す
太陽が見えた。
「本当だ。」
そう言って思わず笑ってしまう自分に
今日は自分を許せる日なんだと思った。
太陽を指差す彼は
曇った顔で言った。
「空は、青い方がいい。
空が青いのは、あいつがいるから」
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