第17話

時は移って、第二学年。

カリンちゃん、ちゃんと進級できました。

いや、まぁ、落第する要素なんて無いんだけども。

化粧品の製造ラインが整って、私はほぼやることがない。

暫くは、のんびり学業に専念できるくらいに、商会は儲かっている。

第二学年からは、クラスが再編成される。

無事にクレアと同じクラスになることが出来て嬉しい反面、やっぱりいる腐れボンボンとその取り巻きにはゲンナリした。

そして、今。野外研修のための、親睦時間という名の班の役割分担の時間。

案の定、三人目は腐れボンボン。そして、四人目にその従者スタンという4人での構成になった。

「とりあえず、班長は誰にしようか?」

「俺かクレアが適任だろうな。お前たちは平民と従者だ。でしゃばるべきではない。俺かクレアなら、俺だろう」

「あそ。んじゃ、班長あんたね。次は、戦闘時の連携のための情報交換だけど、あんたとスタンは剣士で前衛。私とクレアは、魔法と強化治癒で後衛。書いとくわよ」

「それ以外ないだろう。わかっているなら聞かずに書け」

「一応、話し合いの時間だから確認してんだけど?ほんと前から態度が悪い奴だとは思ってたけど、何なの?意味もなくその態度なの、イラつくんだけど。なんかあるなら、高圧的な態度じゃなくて普通に意見すれば?」

「別に、意見するほどの話などしてないだろう。わかりきったことに時間を使うなと言っているだけだ」

「あっそ」

「カリン、あとは何を決めたらいいの?」

「んとね、荷物を誰がどれだけ持つかの分配内容だね。たぶん、先生が過不足ないかとか確認するためじゃないかな?」

「ありがとう。じゃ、決めましょう?自分の分は、自分で持つことにしたらいかが?その方が、あなた達も気が楽でしょう?お荷物の荷物まで気にする必要がなくなるのだから」

「それでいい。本来、自分の分は自分で持つものだからな。女だからと甘えられても、こちらも困る」

「んじゃ、持ってく物の一覧、自分で書きなさいよ。はい、紙。こっちも自分で書くから」

所持品一覧記入用紙をボンボンに向けて渡すと、従者スタンが受け取って改めてボンボンに渡す。

要らんひと手間やろがいっ!と、うっかり思ってしまった。

なんとなくモヤッとイラっとしたまま帰り道でクレアに聞くと、案外貴族ってそんなもんらしい。

従者の仕事だからと言われれば、それを否定するのも違うかと、こっそりスタンに心の中だけで謝っておいた。


持ち物は、自前の着替えと外套に水嚢、支給される魔法薬類に、貸与されるナイフ・調理器具・食器・簡易寝具。テントと食料は、現地で渡されるらしい。

なるべく小さくまとめられるように、二人で元冒険者であるお母さんにコツを聞いてみることにした。

簡易寝具、所謂シュラフの中に着替えを入れて小さな食器と鍋を丸めるときに巻き込んでしまえば、割れない上に音がガチャガチャならないわよと、実用的なことを教えて貰った。

ついでにお母さんが使っていた、ナイフを装着できてと魔法薬瓶を3つ入れられるベルトホルダーを見せてもらって、ちょっと欲しくなった。かっこいい…

使い込まれて柔らかくなったレザーは、いい味が出ていて正しくファンタジーな雰囲気だった。

私とクレアは明日の休みに、自分の外套と水嚢を買いに行く予定だ。

どんなものがいいのか、お母さんにしっかりリサーチした結果、外套はなるべく小さくなる薄くて通気性のいい撥水生地としっかりした縫製の物、水嚢は水を入れた時の重さを考えて自分の必要量に合わせたもので保温保冷が共にできるものを買うことにした。

外套に使われる布が魔物素材の物は高いけど質がいいらしく使い勝手がいいらしい。

保温と保冷の機能は、魔石を使うからこれまたお高い。

いいものは一生ものだということで、普段でも使えるいいものを買って来いと言われた。

出来れば、少しでも可愛い方がいいけど、外套は無理そう。

フード付きのトレンチコートみたいな外套は、雨除けであり体温を下げないためと姿を隠して身を守るために地味な色の物しかないそうだ。

そりゃ、森の中でドピンクとか目立っちゃうもんね。魔物にも、格好の餌食だわ。

「カリン、じゃ、また明日ね。二人でお買い物、楽しみにしてる」

バイバイと手を振って、いつものお迎えの魔動車に乗っていくクレアに手を振って家に入った。

今から私は有用な植物をメモしておくつもりだ。できれば、絵も描いて添えておきたいところ。

どこにでも生えてる有用な薬草は、意外と多い。

出先だとしてもクレアに痛い思いも苦しい思いもさせたくないし、せっせと図鑑からいい感じの薬草類を書き出した。

あとは当日までに、師匠の所で虫よけの煙玉と下し腹の薬にかゆみ止めを作って来なくっちゃ。


そんなこんなで、野外研修当日。

私とクレアの荷物は、背負った野外寝具(いろんなもの巻き込み済み)と斜め掛けのカバン一つにまとまっていた。

着替えに関しても、お母さんに聞いて必要なものだけに厳選したから大した量になってない。

野外寝具の留め金に幅の広い紐を付けて直接背負えるように工夫してしまえば、案外重たさも感じないほどだった。

あとは、細々したものを斜め掛けのカバンに詰めればあっさりと完了した。

「あんた、なに?その荷物…たかが一泊だよね?枕とか必要?貴族子女のクレアより多いじゃん。まぁ、自分で持つんだからいいけどさ…」

「ふん。枕が変わると寝れないんだ!庶民には分からないさ。貴族の繊細さは、なっ!」

大きな枕と、私のカバンの何倍もある大きなカバンを持って現れたボンボンアーノルドはちょっと滑稽だった。

「子供かっ!」

あ…子供だったわ…

ちらりと周りを見ると、案外大荷物な貴族子女と子息がチラホラ見えた。

マジかぁ…

「クレア、これ普通?」

「まぁ、多分普通の域ね」

「マジかぁ…クレアは、荷物持ってきたい物なかった?いいの?」

「私は、身軽な方が楽しめる気がしたし、カリンと用意したんだもの。これでいいわ」

クレア、えぇ子や。

「あんたら、とりあえず行くよ。集合場所、あっちだし。冒険者の人が待ってる」

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