第14話

ガラク植物油・豆茶店の内装は、シンプルな作りの二階建てだった。

入口入って正面の販売カウンター、カウンター横の扉からは6畳ほどの小部屋、カウンターの向こう側には、横の壁には天井まである大きな作り付けの棚、中央に作り付けの作業台と、最奥に焙煎機と圧搾機と周辺器具、圧搾機の横の通用口、通用口を出るとお手洗いのある小屋へ続く屋根のある廊下がある。トイレ小屋のある中庭は小さいけれど、2坪ほどの家庭菜園が出来そうな感じの広さだった。石鹸が作れるな…屋根欲しいけど。

作業員は二人から三人が限界かな?一人が焙煎、一人が圧搾、一人が外で石鹸づくり、私が作業台で抽出と蒸留、みんなで作ってみんなで瓶詰めや缶詰めって感じがフル稼働の状態になりそうだ。

小部屋の裏側の階段から二階に上がると、広めの1LDKくらいの住居スペースになっていた。

個室が1つ、トイレ、湯あみ場、キッチンと揃っていて、キッチンとの対面式のダイニングテーブルは一枚板で出来ていて2人が並んで余裕のある大きさがあった。

前世の私の家よりおしゃれかもしれない…やるな、ガラク爺さんとやら。

一階の大きな棚が印象的だが、全体的にこじんまりとしていて、シックな雰囲気のお店だ。

小部屋にある小さな丸机と丸椅子2つ、焙煎機と圧搾機、二階のダイニングテーブルとダイニングチェア、個室に会ったベッドも併せて売りに出されているらしく、私的にはアリだと思った。

植物油を自分で圧搾して生成するなんて、やったことないけどやってみたいじゃない。

確か焙煎・圧搾・不純物のろ過だったはず?古式圧搾法だっけ?ん~…どこかでしっかり調べよう!昔ちらっとかじった知識しかないのでは、ダメだ。いい木の実類や豆類もこれから探していきたいし。

小部屋はいつか、サロンにするんだ。一人のお客さんに、ゆっくりくつろいで全身ケアをしてもらえる特別室。

最初のお客様はもちろん、クレア。私の中では、すでにそう決まっている。

フェイシャルエステ、ボディのオイルマッサージとリンパドレナージュ、ヘッドスパやアーユルヴェーダもいいオイルが出来たらやれるかも。あぁ、座勳もしたいけどヨモギがない…あとは、アロマ香焚きたいし、練り香なら作れるかな?ネイルケアまで出来たら最高だなぁ…やすりとプッシャーとニッパー、探すかぁ…今ある染めるだけの爪染め、改良されないかなぁ…そうなるとブラシにもこだわりたくなる…

あぁ、トータルエステの夢が広がりまくる!俄然やる気出る!見に来てよかった!

でも、このお店、おいくらですか…(涙)

お婆ちゃんにどれだけ負担を強いることになるのやら…申し訳なさすぎる…(涙)

「どう?カリンちゃん。私は、素敵だと思うけど、まだ手狭かしら?お義母様は初めならこのくらいでは?と言っているけど」

「うん、いいと思う。ここを足掛かりにして、事業拡大でもっと大きな場所に移るにしても、ここは残してほかのお店として使えるし。私は、『買い』だと思うな」

「私も、そう思います。カリンが個人的にお店を続けてもいいと思うし、カリン専用の研究室にしてもいいと思うの」

「研究室!クレア、それいいね。研究室…いつか工房が工場に代わって、ここが私専用になったら研究室って呼ぶことにする」

「やだ…カリン。はずかしい…でも、ありがとう」

「仲良しねぇ。お母さん、ちょっと羨ましいわ…」

「お母さん、お婆ちゃん、ここを商会として買ってください。私、精一杯頑張りますから」

「わかりました。契約してくるわ。カリンちゃん、稼ぐのは大事だけど、あなたがあなたのしたいことをやっていいのよ?やりたくないことで稼がなくてもいいの。私は、あなたがやりたいことで稼いでくれることが望みよ?いいわね?」

「うん、ありがとう。お婆ちゃん。そうするよ。乾燥クリームだって、元はクレアのために作ったものだし、化粧水は副産物だし。でも、私は美容と健康をクレアや家族やみんなに布教したいの。だから、今は好きなことをして稼ぐ算段をしてる。大丈夫だよ」

こうして、元ガラク植物油・豆茶店はカレン商会第一工房として生まれ変わった。

人手は、契約と共に商業組合に募集をかけてもらった。今のところ三人、体力に自信のある、美容に興味があり、人種等に偏見のない人で、製造工程などの秘密を守る神殿誓約を受けてもいいと言ってくれる人を、お願いしてある。

開発者が子供であることも受け入れてくれないと、一緒に働いていてお互いにしんどくなる。いい人が来てくれることを願うばかりだ。


それからしばらくして、お母さんが募集していた従業員の最終面接をするというので、第一工房を使って行いたいという。

もちろん、働いてもらう場所を見てもらうのは大事なので、即OK。

私の学校が休みの日に来てもらうことにした。

お店の改装作業の中、面接を受けに来たのは、4人の男女だった。

一人目は、金髪ボンキュッボン美女、マリーさん。現在某下級貴族邸で侍女をしているが、セクハラ三昧に辟易して転職活動中。

二人目は、カーリーブロンド筋肉美女のレオネさん。最近仲間がケガをしたことをきっかけに辞めてしまった元冒険者で、就職活動中。

三人目は、グレープラチナの毛並みが印象的な猫獣人の女性、ミャリスタさん。とにかく、美しいものがどうやってできているのかに興味があるとのこと。

四人目は、見事な黒髪を長く伸ばした紳士なイケメン、ジョエルさん。緊張しているのか、全身がきゅっと縮こまっているように見える。

実際、今回の店の従業員への応募は、かなりの数あったらしい。

お母さんが商業組合で書類選考後、給料と待遇面で了承してくれたたちに会ってみて、選ばれた精鋭4人だそうだ。

最終選考の意味は、私と一緒に働けるかどうかの相性を見たかったらしい。

「初めまして、カリンです。カレン商会の、商品開発と研究をしています。皆さんが、実際に一緒に働くことになるのは私です。今日は、よろしくお願いします」

ぺこりと頭を下げると、四人とも声をそろえて挨拶を返してくれる。

事前に、私のことも聞いていたのかもしれない。お母さんのことだもん、言ってるかな。

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