第3話

カリンちゃん7歳、今日はお父さんの仕事場に見学に行きます!

トータルケアの夢を実現すると、決意を固めてから2年。

文字も歴史も計算も、勉強しました。

お婆ちゃんに「大人顔負けの文字で、随分丁寧なお手紙を書けるようになったわね」とお褒めを頂けるくらいの文字の習熟度に、お父さんが「まるで計算魔道具みたいだね」と舌を巻く四則演算の速さ、お母さんに「年表が要らないわね」と言われるくらいの歴史の暗記。

どれもこれも、前世での経験が生きてます。

だって、この世界の計算はせいぜい基本的な四則演算が出来れば良くて、私は小学生の時に九九でクラス一番の速度と正解率を誇っていたもの。

お手紙は、お客様へのお礼状から季節の挨拶まで書いてたし、お婆ちゃんにもよく手紙を書いてた。

ツボやら筋肉の筋やら、整体とマッサージがしたくて暗記したから暗記物のコツは習得済みなのです。

と言うことで、お父さんが働くところが見たいとダダを捏ねて付いていけることになりました(ニヤリ)

本当は、冒険者組合の二階にあるという図書館に行きたいだけだったりする。

ちゃんとお仕事は見学するけど、『子供らしく途中で飽きちゃっても怒られないよね?だから、ご本でも読んで待ってるよ作戦』を実行しようと思っている次第。


「カリン、準備は出来たかい?」

「はい!できました!お絵かきちょうも色えんぴつも、手ふきと、のみ物もカバンに入れましたよ」

「よし、忘れ物がないなら行こうか。行ってくるよ」

お父さんと手を繋いで、お母さんとメイドさんに見送られて、護衛さんと一緒に冒険者組合まで行ってきます!

一度振り返ってお母さんを見たら、何故か泣いてた…なんでだ?

「お父さん、ぼうけんしゃくみあいは、こわいですか?カリンは、なかよくなれるでしょうか?」

「大丈夫だよ。冒険者達はもっと早くに来てすぐに依頼をしに出て行っているし、居るのは職員たちくらいだね。みんな、カリンが来るのを楽しみにしてくれていたから、仲良くなれると思うよ」

少し大きなリュックを背負って見上げると、お父さんが笑っていて少し安心した。

いざ、夢のための更なる一歩を踏み出すのだ!



「おはよう、今日もみんなよろしく頼むよ。今日はカリンがいるから、仲良くしてあげて欲しい」

「おはようございます。カリンです。今日は、お父さんのおしごとのけんがくに来ました。みなさん、よろしくおねがいします!」

「「「よろしくおねがいします」」」

みなさんから、笑顔の挨拶を返してもらって、心底ほっとした。実は結構緊張していたから、安堵感が半端なかった。

お父さんの後を進んで執務室につくと、イケメンお兄さんが出迎えてくれた。

お父さんの秘書をしている人で、セインさんと言うらしい。

セインさんが応接セットの椅子に案内してくれて、お茶を出してくれる。

暫くは、じっとお父さんの仕事ぶりを大人しく見学。


仕事は、経理会計や冒険者同士の揉め事の処理や近所や依頼主からの苦情の処理、貴族からの依頼の確認と誰に仕事を振るかなど、結構いっぱいあるみたい。

お父さん、頑張れ~!と心の中で応援しておく。

体感にして2時間くらい?子供のお腹は、午前のおやつを求めて鳴きました。

「カリン、お腹空いた?セイン、何かお菓子をあげてくれないか。軽いものでいい。お昼ご飯をちゃんと食べさせる約束だからね」

「セインさん、ごめんなさい。カリンはおなかがすいてしまいました。よろしくおねがいします」

ペコっと頭を下げると、セインさんはニッコリ笑って「すぐに用意しますね」と、部屋を出て行った。

「お父さん、じゃましてごめんなさい。おなかのおと、とめられなかった」

「大丈夫だよ。セインが戻ったら一緒にお茶にしようか。適度な休憩は大事だね」

「はいっ」

「退屈では、ないかい?」

「だいじょうぶです。お父さんは、たくさんおしごとをしてるから、がんばってるのをみて、おうえんしてます」

「ありがとう。お茶をして仕事を少ししたら、一緒にお昼ご飯を食べよう。今日は食堂もカリンのために準備してくれているから、楽しみにしておいで」


お茶とお菓子を頂いて、ぽや~としてると眠くなる。それは、お子様あるある。

ちゃんと眠くなって、椅子でクテンとなった私はお父さんに「お昼だよ。起きなさい」と揺すられて起きた。

「ごめんなさい!きもちよくなって、いつのまにかねてしまいました」

「大丈夫。ご飯は食べれるかい?」

「はい。だいじょうぶです。おひるごはん、たべたいです」

お父さんに連れられて組合の食堂に来ると、お兄さんお姉さんたちに混ざって開いている席に座った。

「カリンちゃん、だったよね?お父さんのお仕事の様子は、どうだった?」

隣に座っていたお姉さんに声を掛けられて、ちょっとドキドキしてしまった。

お姉さんのお胸が、存在をこれでもかと主張してくる…くっ、私だっていつかは…

「お父さんは、とってもおしごとをがんばっていました。たくさんのおしごとがあって、たいへんそうでした。ちょびっとねてしまったけど…ちゃんと見てました」

フフフと笑って「そっか」と言うと、お姉さんは小さなクッキー的な焼き菓子をくれて、子供ってお得だと思った次第。擦れた子供で、みなさん、ごめんなさい。

食堂のコックさんが特別に用意してくれたらしい、所謂『お子様セット』をぺろっと食べあげて、デザートに良く冷えたバレンジを頂きました。

お子様セットの内容は、一口サイズに切られた柔らか牛ステーキとジューシーな揚げ鶏にポテトサラダ、コーンスープと子供の手のひらサイズの穀物パン(ちょっと固め)が2つ。そして、バレンジ。それはもぉ、大満足!!お腹がポンポコリン状態。

「ごちそうさまでした!とってもおいしかったです。ありがとうございます」

綺麗に何もなくなったお皿を持って、特別に直接お礼を言わせて頂きました。

「お父さん、おひるからはご本をよみたいです。としょしつがあるってききました。行ってみたいです。いいですか?」

「いいよ。セインに案内してもらって、行っておいで。午後からもお父さんの仕事は、あんまり面白くないものばかりだからね」


やったね!!ラッキー!読み漁るぞ~(フンス)

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