第2話
カリンちゃん5歳、はじめてのおつかいに出陣しますっ!
この世界?国?いや、この家のしきたり的な?な感じで、5歳の誕生日を盛大にお祝いしてもらった翌日に、はじめて1人で街に繰り出すのです。
いや、別に、おつかいは普通に出来ると思うんだよね。だって、中身がアラサーだし。
ただ、この世界はファンタジーな異世界。
何が起こるか分からない不安は、やっぱりあるよね。
人攫いとか、通り魔的なのとか、色々?あれ?前世も危ないっちゃ危ないか…
まぁ、5歳だし。保育園とか幼稚園とかの年中さんくらいの歳だし。
たまぁに、極たま~に、お母さんとメイドさんと護衛さんに連れられて街に出る事はあったから、街の雰囲気は分かってるから大丈夫だとは思っているけども…
今日は、見える範囲にはメイドさんも護衛さんも居ない。完全1人。
おつかいの内容は、大人の足なら徒歩5分位の道を挟んだ反対側を右手に歩いて5つ目の薬屋さんで、メイドさん達の手荒れのお薬を3つ買ってくるだけ。
いや、出来るわ!出来すぎるわ!と、思わんでもないけど、人生1回目の5歳児には、とんでもない大冒険だよね。きっと…本来なら…
「おかあさん、おとうさん、おばあちゃん、みんな、いってきます!」
「カリンちゃん、行ってらっしゃい。お車や怪しい人に気をつけてね。忘れ物してない?お使いの内容、覚えてる?お金持った?大丈夫?」
「だいじょーぶ!ちゃんとおぼえたし、ちゃんとおかねもかぞえたよ!」
「カリン、気をつけて行っておいで」
「カリンちゃん、行ってらっしゃい」
「お嬢様、行ってらっしゃいませ。ご無事のお帰りをお待ちしております」
心配性過ぎるお母さんと、他のみんなに見送られて、いざ出陣!
テクテクと歩いて、怪しい人が居ないか周りを確認しながら、ポシェットに入った銀貨の存在を確かめつつ、難なくお店に到着。
「こんにちは!おねえさんたちの、おててがいたいいたいのおくすりを3つ、ください!」
扉を開けたすぐのカウンターに居るお兄さんに、子供らしく元気よく伝えましたとも。
ちょびっとイケメンなお兄さんは、2つの違うお薬を出してきて「銀貨1枚の物と、銅貨8枚の物、どっちがいい?」と聞いてくる。
引っかけ問題ですね?簡単ですとも。
大丈夫、ちゃんとお金の勉強もしました。
銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で小金貨1枚、小金貨10枚で金貨1枚、金貨10枚で大金貨1枚、大金貨10枚で小白金貨1枚、小白金貨10枚で白金貨1枚。
10枚毎に硬貨の種類が変わっていくのは、すこぶる覚えやすかった。
だいたい銅貨1枚で100円の計算で、白金貨1枚で1億円って感じ。
更に大白金貨ってのもあるらしいけど、滅多に市場には出てこない感じみたい。そりゃ、そうだろうなぁ。
多分、一般的に商売で使われるのは、大金貨くらいまでが多いんだろうと思う。
とりあえず、私が買ってくるお薬は、1つ銀貨1枚のもの。1,000円くらいか、ちょっとお高い気もせんでもないな。でも、そんなもんかな?もっとお高いのも前世で結構見てきたし。
もちろん、迷わずに正解の方をチョイス。
「こっちのぎんか1まいのものをください」
「はい、わかりました。1つ銀貨1枚なので、全部で銀貨を3枚下さい」
3枚の銀貨をポシェットから出して、お兄さんに渡して、商品を3つポシェットに入れて完了!
「ありがとうございました」
「はい、こちらこそ。ありがとうございました。お大事に」
ちょびっとイケメンなお兄さんの爽やか笑顔に見送られて、またもや難なくお家に到着。
「ただいまかえりました!」
玄関で送り出してくれた時のまんまで、待っていてくれたみんなに迎え入れられて、家族に順番に抱きしめられた。
「凄いわ!カリンちゃん!おつかいも難なく完了ね!」
「早かったなぁ。何にも困らなかったかい?」
「おかえりなさい。お父さんよりもの凄く、早かったわよ。やっぱりカリンちゃんは、とってもお利口さんなのね」
褒められまくって辿り着いたお茶とお菓子の並ぶリビングで、メイドさんにお薬を3つ、ちゃんと日頃の感謝とハンドケア方法を伝えてお渡ししました。
「あのね、ねるまえにおててにおくすりをぬったらね、てぶくろをしてねんねするといいんだって。くすりやさんがおしえてくれたよ。いつも、ありがとう」
これで、メイドさん達の手荒れが少しでも良くなると良いんだけどなぁ。
洗濯は魔道具がしてくれるけど、食器なんかの洗い物は手作業だから、手荒れは無くならない職業病だよね。
「お嬢様……ありがとうございます!今日から手袋をして寝ますね。本当にありがとうございます」
涙目でお薬を受け取るメイドさんとのやり取りを、他のみんなが生暖かい目で見守っているのだろうなぁと背中に感じながらのひと時だった。
出来ることなら、みんなにもっと色々教えてあげたい。美容とか、健康法とか、民間療法的なこととか。
歩いた限りじゃ道端にヨモギやドクダミのようなものは無かったけど、この世界には怪我や魔力や体力の回復用の薬草があるみたいだし、ハンドケアだけじゃなくてフェイシャルやボディのケアも、きっとできるハズなんだよね。
真面目に勉強して、本気で目指すことを考えちゃおうかな?
最終目標は、トータルケアの第一人者!なんて、夢のまた夢かしら?
でも、前世の私の夢でもあったんだよね。頭の先から足の爪先まで、トータルにケアできるサロン。
勉強も色々してたけど、結局ボディケアも出来るフェイシャルエステサロンで、エステティシャンやって、そのまま死んじゃったんだよねぇ。
どうせ、やることの決まってない、やり直し人生。しかも、まだ5歳だし。やってやれない事はない!
よし、目指してみよう!
先ずは、何はともあれ文字の勉強からだな。
その後は辞書とか図鑑とか、読み漁らないと。
それに、この世界の美容関係も最先端を知りたい。薬草学にも精通しなきゃだめかも?
あ、人体の構造とか、獣人さんとかはどうなってるんだろう?耳とかシッポとか、動物と同じ?
前世のハーブやアロマとかならある程度…
ん~、どこまで通じるだろう…
やること満載で、ちょっと楽しくなってきちゃった。
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