最近、会いたかった人に会った
カクヨム登録日と実際の初投稿日に3年ほどの開きがあることに不意に気付いた。はてなと考えてみると思い当たることが一つある。
わたしが物を書く、もしくは書き続けるに至ったターニングポイントには何人かが立っていて、そのうちの一人がA氏だ。
A氏は、正確には分からないがいくつか年齢が下で、しかし先輩後輩というより気兼ねのない仲間といった存在だった。当時は同じ職場に勤めており何人かで集まってはたまに飲みに行ったりもしていた。
その一コマに私の今に繋がる出来事がある。
出来事といっても何かアクシデントがあった訳ではない。たった一言だけだ。
これまた正確には覚えていないが、わたしの同期も加え集まる会があった。この時期は散り散りに職場が移った後だったため、向かえる人からお店へ行き飲み始めていたのだがドタキャンに次ぐドタキャン。みんな残業しすぎだよ。
中には待てど連絡の無い者もいた。報連相どこにやっちゃったんだよ社会人。
蓋を開ければサシ飲みになった。
珍しいことになったとは思ったが、複数人で賑やかな場とは少し違い、 賑やかな音に囲まれてゆっくり飲むのも楽しいなぁとか思っていた。
したたかに酔った社会人が話すことと言えば、その4割ぐらいは将来についてではないだろうか。当者比です。
たぶん聞かれた。 「将来なにやりたいの?」。そして多分いや確実に仕事においての話題だったろうと思う。しかし例に漏れずぼんやり酔ったわたしは思わず、常々ではないにしろ日頃思っていたことを口にしていた。小説書きたいね、と。
A氏は言った。「書いたらいいのに。」と。
目の覚める思いだった。思いだけで酔いは醒めていない。
そんなことを言われたのは初めてだった。当然だ。誰かにこの話をしたのは初めてだった。
そもそも何故そんな話をしてしまったのか。
A氏なら、笑わない気がしたから。唯一はっきり覚えているのはこの動機だ。
別に隠し事ではない。後ろめたい事ではもっとない。それでも奥に仕舞い込んでいたものを話したら、またそんな風に言われたら、何かが軽くなったような気がした。受け入れられたように感じたからだろうか。
そんな雷に打たれているなぞ露も気付かず、向かいでジョッキを傾けたA氏はこんなやりとりを憶えていないだろう。単にわたしの発言に感想を述べただけだろうし。
しかし何気無く呟かれたその一言が、わたしを本当のスタートラインに立たせたのは間違いない。
それから自分に合った書き進め方として投稿サイトを選び登録した。ただ、繋がりのある物語を書く、というより考えるのに四苦八苦した記憶がある。初投稿までの右往左往が冒頭の空白期間だったらしい。腰と筆が重すぎるが、恐らくそうなんだろう。
物語を上手く進められようが難航しようが、先へ踏み出す原動力になったのは、いつか再会する日が来たら必ずA氏にお礼を言おうと決めたことだった。A氏が憶えていようがいまいが言いたかった。
あのサシ飲みがあったから、わたしは今書くことに楽しく頭を抱えている。
その機会が降ってわいたのが昨年の年末だった。忘年会万歳、コロナ明け万歳。 何かと理由を付けて企画したのが何を隠そうわたしである。幹事特権をフル活用してメンバーをかき集めた。
なんて充実した時間だったろう。あんな風に一同に会するチャンスはそうそう無い。 酒の席万歳。
果たしてA氏と再会できたのだった。
案の定A氏は憶えてないっぽい反応だったが、あの日と変わらず、笑わずにわたしの話を聞いてくれた。
誤算は、酔っていたとは言え調子に乗ってA氏にこのサイトをうっかり教えてしまったことだ。見られるかもしれん。
別に隠し事ではない。後ろめたいことではもっとない。だが気恥ずかしいことこの上ない。
やはり飲酒量を見直すべきだろう。
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