窒息する前に吸う

最近、

溜め息が多い。理由は分かっている。



はぁーーーーーーーーーー



と鏡越しの自分を睨みつけては口呼吸する。気を抜くと大声も出そうだ。

地団駄を踏みながら戸惑い、顔を覆い悔やみ、しゃがみこんで鬱々と目を閉じる。そろそろ眉間で紙が挟めそうだ。


溜め息にはバリエーションがある。

疲れ諦め憐憫安堵寛ぎ羞恥。もちろんもっとある。

そのどれかの時もあれば複数の意味合いが混ざっている時もある。

笑顔や涙と同じで、一括りにはできない。感情の動きが可視化したひとつである。

今のわたしはどれなのか。



そういえば小学生の頃、溜め息について持論を説いてきた同級生がいた。

年齢にそぐわないほど貫禄あるその子はやはり発言も少し大人びたところがあり、更には医療に携わる家系だったため、備わった基礎知識を披露しては感心の的となっていた。

『いっけな~~い、溜め息つくと幸せ逃げちゃうんだった!』みたいなことをうっかり口に出した友人に向けられた、氏の冷静な視線。あくまで友人の発言であり、わたしではない。決して。


細かいことは忘れてしまったが、たぶん結果「幸せは逃げない。迷信である。しかし溜め息はよくない。」だった気がする。筋肉の収縮がどうとか色々言っていたかもしれない。

内容よりこのエピソード自体がわたしのクラスらしさ、「色」を代表しているため濃く記憶に残りった。

今でも溜め息12回に1回くらいの頻度で思い出す。迷信だってぐらい分かってらい。



それからわたしは溜め息に気づく度に大きく息を吸い、深呼吸ですという顔に塗り替えるようになった。正論へのささやかな抵抗としてこれは習慣化している。

だから幸せは逃げていない。

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