地下2階(下)

あしばが足りない。地面に降りるしかない。荒れた石畳に着地する。


階段まであと少し。半分は飛び越えられた。残る全員を相手にする必要はない!階段までの道のりで確実に立ち塞がっているのは10体!


まずスケルトン。背嚢を手に持ち、思い切りスイングする。スライム入りの背嚢をスケルトンを思い切りぶちつけ、地に倒す。手落とした剣を拾う。ゾンビ!剣を横薙ぎに振るう!胴体を真一文字に切断!


水弾が頭上を掠め、牙を剥いたスケルトンコウモリを叩き落とす。3体がまとまってきた!長椅子に登り、跳んで踏みつける!ボンゾンボン!勢いのまま、さらに立ち塞がるスケルトン2体へ飛び蹴り!骨格四散!


残り2体!



赤黒いスケルトンと、腹が異常に膨れ上がったゾンビ!どちらも素早い!背嚢を前に背負う!


太ゾンビからドス黒い液体が吐き出される!掠った長椅子が溶ける!だがスライムの水弾!相殺!


赤黒スケルトンがやたら剣を振り回す!近寄れない!だが剣を足元へ投げつける!足首を砕く!落ちてきた頭を蹴飛ばす!


小気味良い音で胴体と分離!太ゾンビの頭に激突!赤黒いスケルトンの骨は硬いようで、突き刺さる!脇を通り抜けるとき、足を蹴飛ばして転げさせる!背後に迫った大群が将棋倒しになる!



突破!突破したぞ!階段は目の前!





がしり、と足が止まる。





大群の先頭にいて、転んだはずのやつが、俺の足を掴んだ。転んだ拍子に届いたのか!構わない!靴紐は緩めておいた!脱出!





間に合った。





階段に滑り込む。すぐ後ろまで迫っていた足音がピタリと止む。息を落ち着け、スライムを背嚢から取り出す。



残り、1階。



階段に座り込む。泣いても笑っても次が最後。手荷物を確かめる。


・ぬめった背嚢

・ボロ布の服(上下)

・靴(右足のみ)

・一対の指輪

・スライム(すこし小さくなった?)


武器なし、片靴なし、松明なし。


松明は、恐らく階段の途中にある。靴は……片方だけでも履いておこう。武器……武器は、奪えばいい。スライム入りの背嚢で殴れば良い。


ようやく息が落ち着いた俺たちは、スライムを肩に乗せて上り始めた。





ぐらり。


地面が揺れた。ぐら、ぐら、ぐら。立っていられない。


振り返る。礼拝堂の奥の奥、神様の像にヒビが入る。ぐらぐらぐらぐら。


内側から、石の像が弾け飛んだ。



俺は見た。




おぞましい肉の手足を。


すくみ上がる骨の胴体を。


肉食獣の食べ残しのような、冒涜的な体。




だが、比率がおかしい。手足が長すぎる。その手足はゾンビやスケルトンの身長と同じぐらいの長さがある。対して、胴体が普通なのだ。そこらのスケルトンと、同じなのだ。



そして何より、頭は、頭に被るのは、




‼︎‼︎




この地下墳墓の主だ!


ゾンビやスケルトンを文字通り蹴散らしながら四足歩行で迫り来る!だが、階段、階段のルールが、ある……!踏み込めないはず……!



怪物は先頭のゾンビを踏み潰す。



そのまま、何も抵抗がないように、躊躇なく、冒涜的な手足で……



階段に、一歩目を踏み入れた。



俺は駆け出す。追いつかれたら、死ぬ!



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