地下4階(急)
松明を掲げて通路の奥へ目を凝らす。道標となる水滴がちらほらと落ちており、近くに物音は聞こえない。足元に気をつけながら、ゆっくりと歩みを進める。
古代文明の地下墳墓、名前の通り墓である。古代文明の権力者たちが眠っている……はずなのだが、軒並み全ての地下墳墓の中はバケモノで溢れている。何故?
一つの答え。権力者たちは世界を呪った。大いなる文明の支配者である自負が、死を受け入れなかった。生を恨む恐るべき古代人の呪い。生きて帰れない迷宮。これが地下墳墓に対する俺を含む市政の考えだ。
だが命知らずな奴もいる。地下墳墓へ自ら突入し、葬られたお宝を狙う探窟家。だが……悲惨な末路を辿る者が大半だ。
角のすぐ向こうにいるゾンビとか。背嚢を背負い、擦り切れたボロ布を纏って、オウオウとうめいている。ゾンビは匂いとか音で動く。腐って柔らかいためスケルトンよりかは弱い。
そして、身ぐるみを剥ぐなら孤立しているコイツからだ。全裸は危なすぎる。
松明をそっと置いて、両手で折れた剣の柄を握りしめる。一気に頭をかち割って終わり。躊躇っているヒマはない。
角から飛び出して剣を振りかぶる。ゾンビが振り返る。優しい顔の若い男だった。頭をかち割る。脳みそが噴き出て、ゾンビがその場に崩れ落ちた。
念の為首を刎ねて、装備品を剥ぎ取る。物音に怯えながらいそいそとボロ布に着替える。靴はなかなか上等で、頼もしさを感じる丈夫さだった。
背嚢をひっくり返していると、ペンダントがポトリと落ちた。パカパカ開く種類である事に気づき、そっと壊れないように開く。
質素な指輪が収まっていた。
同時、ゾンビの胴体側の首の切断面からゴポリ、というガスが噴き出す音がした。
そこには、質素な指輪がはめられた、細くて綺麗な指があった。
探窟家たちの末路なんて、ロクなもんじゃない。
対となる指輪を背嚢に放り込み、松明を拾う。
その後は水滴を追い続けた。3つや4つの角を右に左に曲がり、スケルトンやゾンビに怯えながらそろりそろりと足を進めると、上階への階段が現れた。3階の天井もうっすらと見える。
階段は安全地帯だ。地下墳墓のバケモノは階層を移動しない。
だが、助けをひたすら待つほど楽観的ではない。
階段を踏みしめる。
階段を上り切ると、見渡す限りの湖が広がっていた。湖の底には、青々とした草花が生い茂っている。よく見るとそれは庭園であり、迷路のような生垣が見えた。つまり、水没しているのだ。
俺をさらった洪水は、このダンジョンにそのまま流れこみ、この庭園を水没させたのだ!
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