地下4階(破)

スケルトンがアゴの骨を揺らしながら剣を叩きつけてきた!


横へ転がると、隣の地面がガツンと叩かれた。その剣は折れているだけでなく、錆や汚れに塗れており、何かを切った跡がある。スケルトンが剣をゆっくりと持ち上げる。


その隙に立ち上がる。ヤツが再び剣を振りかぶる。俺はこけないように後ずさる。ガツン、と手前の地面に剣がぶつかる。スケルトンは剣に振り回されるようにぐらぐらと体が揺れていた。


避けれる、避けれるぞ!……倒せるんじゃないか?


ここで逃げ出しても、後ろから追いかけられるだけだ!


スケルトンに気をつけ、何か武器になるものを探す。拳はダメ(骨は硬い)、蹴飛ばすのもダメ(裸足だぞ?)、松明、ドクロ……。石ころだ!床や壁から剥がれた石ころがそこらに転がっている!


スケルトンから急いで距離を取る。床の隅に転がっているいくつかの石ころを拾う。カタカタとこちらに迫るスケルトンめがけ、角ばった石ころを投げつける。


石ころがスケルトンの頭に当たった。大きくのけぞり、立ち止まる。どんどん投げつける。ガツン、ガツン、バキン。石ころはスケルトンのいくつかの骨を砕いた。



だが、それだけ。



肋骨が砕けても、鎖骨が砕けても、つま先を潰されようと、スケルトンはにじり寄ってくる。空虚な眼窩が俺を見据える。石は残り2個。投げつける。ヤツの腕を砕いた。剣を持たない方の。顎をカタカタと鳴らしている。錆び、汚れ、そして折れた剣で俺を殺そうとする。残り1個。スケルトンが剣を振り上げる。石を握りしめる。虚無の目が俺を睨んでいる。剣が振り下ろされる。


俺は恐怖で叫んだ。そして、みっともなくこけた。おかげで剣は俺を捉えきれず、石畳みに食い込んだ。片手では剣を引っこ抜くのに時間がかかる。ぐい、ぐい、とヤツが目の前で剣を抜こうとしている。俺は石ころを両手で握りしめる。立ち上がる間も惜しみ、急いでスケルトンの膝を石ころで殴る。関節を砕かれて、目の前に頭から倒れ込んできた。石ころを思いきり振りかぶって、ヤツの頭蓋骨に叩き込んだ。


陶器のように、頭蓋骨が砕け散った。


ビクンと一度スケルトンの体が跳ねた後、それきり動かなくなった。


俺は息を切らしながら涙を流して嗚咽していた。


怖くてたまらなかった。自分を殺しにくるバケモノが、こんなに恐ろしいなんて知らなかった。このまま、ここを動きたくない。もうバケモノに出会いたくない。



……でも、こんな所で死にたくない。



俺は石ころを手放し、スケルトンの手から折れた剣を取り上げる。もう片方の手に、壁にかけられた松明を持つ。


松明を掲げて目を凝らすと、分かれ道のうちひとつの通路に乾いてない水滴が散らばっているのが分かった。


きっと、俺が流されてきた痕跡だ。


バケモノだらけの地下墳墓。その最下層の地下4階に、俺はいる。だがスケルトンを倒すことで、折れた剣を手に入れた。進むべき道も見えた。


水滴が残る方向、地上へ向けて、俺は踏み出した。

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