第3話 人違いです!!Ⅲ
俺の前に突き出された2枚の紙。
1枚目の内容は、俺を監視対象とし、学園生活やプライベートを担当の機関の者が監視するという物だった。だが、正直言ってこんな事は予想の範囲内だった。が、実際は予想外の項目が追記されていた。
以下は、その一部の抜粋である。
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追記
担当監視員の強い希望と、監視対象の御家族と所属する学園の学園長並びに、担任教師の承諾を得た為、監視対象の寮部屋での泊まり込みの監視を許可する。
※上記の承諾押印は付属の別紙にてご確認下さい。
以上。
つまり、両親は俺の自由を売りやがった!
学園長も教師も!!
嵌められた!!
てか、担当監視員で誰だよ。。
まさか、目の前のポンコツストーカーか!?
冗談であって欲しい。。。
「おい、この担当監視員って誰だ?」
すると目の前の女は勝ち誇った表情をさらにうざくさせた。
「その質問に答えてもいいですが、条件として、貴方が結城桜火であることを認めてください」
ニンマリ笑顔。
腹立つ!!!!!!
「はぁ。そうだよ。これでいいか?」
さっきの気色悪い笑みから一転し、ジト目を向けられた。
「余計な手間をかけさせないでくれませんか?上司に報告すれば厳しい処罰を執行することができますが」
ご尤もで。
「返す言葉もございません」
「どうしようもないですね。それでなんでしたっけ?担当監視員でしたっけ?」
若干疲れのあるトーンでやっと本題に入れる。いや、もう、マジ悪い。言わんけどね。
「そうだ。で、誰なんだ?この紙には泊まり込みって書いてあるが。。」
すると彼女は首を右に傾けた後、人差し指を自身の顔辺りに向けていた。
「。。。」
目を合わせ、彼女に問う。
「冗談だよな!」
彼女は一切の動揺を見せないで口を開く。
「事実です。」
「。。。」
気まずくなったとか、緊張とかそういった類いではない。
「せめて泊まり込み無しにしない?」
左頬が引き攣ってるのが分かる。
プルプルしてる。あ、俺のね。
しかしながら、返ってくる言葉は虚しく。
「決定事項ですので」のみ。
俺は悟る。俺が考えたスクールライフが叶えられなくなるという事を!
監視対象。それはいい。
学園生活、私生活の監視。それもまぁいい。
泊まり込みでの監視。は?
しかも歳の近い男女。。は?
緊張とか免疫がないとかの話じゃない。
全世界の男には!
剣を握る時がある!
我が子同然の愛剣、愛刀を手に取り
勃ち上がる時がある
しかし、これからの生活で待ってるのは。。
クッ!
我のエクスカリバーを封印する時が来たか!
「。。ハハ。とりあえず、いつまでも玄関の前ってのもアレだから、中に入れよ。荷物の類いは後日か?」
「そうですね。荷物は入学式後に到着する予定です。あ、お邪魔します」
そう言って中に入っていった。これ、他のやつに見られたら何て言えばいいんだろうか。
てか、なぜ泊まり込み?後で諸々問いただすという結論に至り、ドアを閉める。
そして、気がつく。
うん?入学式?って事は。。。
「おまえ、後輩なのかよ。。」
これからの事を想像して絶望しながらリビングに向かう。ふと見るとソファの左端座りデバイスを弄っている人物が1人。
見られない光景に若干の気持ち悪さを感じつつも、やつとは反対の右端に腰を下ろす。
「ところで、名前は?」
特にする事もなかったので、会話を試みる。
「あ、名乗ってませんでしたね。
わぁー、丁寧な対応できたんだー。
「俺としては、あまり宜しくしたくはないけど。。主に学園では。。」
本心だ。絶対目立つし、めんどくさい事になるだろ。。
「それは無理です。担当監視員なので。」
グッバイ俺のスクールライフ。
「ところで、私は貴方の事を何と呼べばいいですか?」
そんなこと気にするとか以外だな。さっき俺のことフルネームで呼び捨てしてたろうに
「普通でいいぞ。俺は名字で呼ぶわ」
「そうですか。それじゃあ私も結城先輩と呼びます」
なんかいいな。
今までの人生において、年下。それも女子から先輩と呼ばれたことがあっただろうか。
否である!
まぁ相手が監視員ということを抜きすれば俺の心の安寧が保たれそうだ。
それはそれとして。
「そういえば、授業中とかはどうすんだ?まさか俺のクラスに来るとか言わないよな?」
ここはハッキリさせておこう。
「いえ、流石に今の結城先輩には、そこまでの危険性がありませんので、したくてもできない状況にありますが。。。」
「そ、そうか」
危険性。。。か。
そう言えば。。
「なぁ、俺は一体ど〈ドカァァァン〉
「「!?」」
俺が、一番聞きたいことを聞こうとしたタイミングで、物凄い威力の爆発音が鳴った。俺は二月と顔を見合わせる。
「一旦確認しに行くか?」
二月は少し悩んだ風な表情を浮かべる。
「もしもの事を考えるなら、学生である私達が向かうべきではないですね。。」
ご尤もで。
まぁ学生としてならの話しなんだけどな。
「そっか。あーそういえばなんか小腹が空いてきたな。けど、冷蔵庫にはないしなぁ。
コンビニに行かないとなー」
俺はそう言って二月に視線をやる。
てか俺、下手かよ!
恥ずかしい!
するとクスリと笑って立ち上がる。
「仕方ありません。私は結城先輩の担当監視員ですからね!」
学園の寮を抜け、爆発音がした方向へと向うため、電車に乗っていた俺たち。
電車内のアナウンスやネットでの情報を元に何とか爆発音の場所を特定したにはしたんだが。。
「なぁ、これ単なる事故だと思うか?」
場所は貨物特区内で起きていた。この人工島は貨物船や貨物列車による輸出入が主流だ。別口で戦技もあるが、今回の爆発事件とは関係ないように思える。話しを戻すと、貨物特区内で爆発が起きた。ネットニュースによれば、トラック同士の衝突事故なんじゃないのかとか言われていたが。。
「そうですね。。可能性が低いと思います。私達がいた学園の寮からこの貨物特区まで距離が離れすぎています。だというのに。。」
「爆発音はしっかり届いていた。。」
「はい。相当な威力だと考えられます。それに貨物特区内での作業員はある一定値の出力までの制限はありますが、戦技を使用可能となっていますので、作業員の暴走でもないです」
ってなると、考えられるなら
「本当にトラックによる事故か全く関係なく外部の犯行か。もしくは魔物か。。」
可能性はあるが。。
「どちらにせよ、警戒はしっかりとしておきましょう。最悪の場合もありますし」
「だな」
そうして俺たちは、貨物特区の最寄り駅に着いた。因みに今の所爆発音は寮で聞こえた1回のみ。
ただここまでは問題ないが、問題は貨物特区だ。
「二月どうする?貨物特区内は関係者か許可証がないと通過できないぞ。カメラもある」
すると彼女はというと
「そうですね。時に、結城先輩は魔力込みの跳躍でどこまで飛べますか?あ、1人抱えた状態でです。」
何言ってんだ?
「そんなのした事ねぇから分からん。そんな事より俺は「じゃあ質問を変えます。できますか?」
遮んなよ!!!
「はぁ。できるんじゃないか?魔力量多いし、練度も高いしな。それがどうしたんだ?良い加減説明してくれ」
「そうですか。では、結城先輩、私を抱えて飛んでください」
何言ってんだ?
「マジで言ってる?」
二月の顔は真剣な表情のまま口を開く
「結城先輩グズグズしてないで、早く抱えて飛んでください」
俺は言われるがままに二月を抱えた。
まるで某隣のトロロのワンシーンで、トウモコロシを抱き抱えてるが如く。
そしてそのまま足に魔力を流す。
膝を曲げ、肺の酸素を吐き出す。
力みを減らして、両足に力を入れる。
膝が伸び切る寸前で力強く蹴り出す。
瞬間。
まるで何かが爆ぜたような破裂音と共に、踏み込んでいた地面は陥没。
遥か上空には男女の姿が。
「何やってるんですか!」
そこには怒れている男の姿が。
「何ってお前が飛べっていうから」
俺がそう答えると、腕の中からとても冷たい視線が。。
「あの流れなら、普通飛び越えるくらいで良いって思いますよね?」
ジト目が。。。
「ったく。悪かった。」
謝ったはいいがどうすっかなかこれ。
「もういいいです。ただ嬉しいことにどうやら飛び越えてることができてるみたいですね。」
その言葉を聞き、俺も周囲をざっと確認。
どうやら高さをミスっただけだったみたいだな。
しばらくして。
無事着陸!
「さぁ。先を急ぎましょうか」
〈ドカァァァン〉
先を進もうとした途端、2回目の爆発音と共に爆風が迫り、飛ばされそうになる。
すかさず俺は魔力を波上にして、爆発がしたであろうところまで放出し、範囲内の索敵を行う。
そして。。歪で異常な気配が一つと、それに似た魔力を持った人の気配が一つあることがわかった。あとは夜勤の作業員か。
うん?反応が減ってる?
まさか。。。
俺がとんでもない仮説が浮かんだのと同時に
二月から声がかかる。
「結城先輩、まさか魔力探知できたんですか?反応はどうですか?」
「ああ。結果と俺の仮説を聞いてくれ」
説明し終えると二月は難しい表情をしていた。
「結城先輩の仮説通りなら、私達の手には負えませんね。」
俺の仮説。それは、2つの異常な気配が作業員を襲っているって事。つまり外部の犯行って事だ。襲っている理由は分からない。が、作業員の魔力の反応が減ってるのと同時に、二つの内一つの気配の持つ魔力の量が膨れ上がってることが関係している。
まぁ人を襲う時点で、大方見当は付くが。。
「なぜ人がそこにいるのかだな」
「実際に見る事が出来ればいいのですが。。
」
俺の言葉に反応した二月の言葉からも分かる通り、この件は俺達には手が出す事ができない。先程説明した時も、二月が上司経由で通報したと言っていたし。
俺達はこの場から去って安全圏に避難しなければならない。
だが、助けることができるかもしれない命を見逃せる程、俺達も諦めがいい方ではないのは確かだ。
「クソッ。どうすれ。。!?」
俺がこの先どうするべきか考えていると、
突然、2つの異常な気配が物凄いスピードで俺達のいるところに向かってきるのが分かった。
「どうしたんですか結城先輩?」
「やばい。今度は俺達が狙われてるかもしれない!物凄いスピードこっち向かってやがる!」
その言葉に二月は驚きを隠せていなかった。
しかし。。どうする?
隠れても見つかりそうだ。。
どうすればいい。。
俺がそう考えていると
「結城先輩は逃げて下さい。」
と、二月からあり得ない言葉が飛んできた。
「二月はどうするんだ?」
俺の問いに表情を曇らせる。
「却下だ。」
すると、二月は俺に鋭い眼光を向けた。
「結城先輩は監視対象です。監視対象を危険な目に合わせないのも私の任務です。だから」
「だから自分が逃げる時間を稼ぐってか?」
二月がいい終える前に俺の言葉を被せる。
それは、二月のペースに持ってかれたくないからだ。
「。。」
無言は肯定。
やばいな。もうすぐそばまで来てやがる!
「どうやら言い争いをしてる時間は無さそうだぞ!戦技を準備しとけ!」
俺の言葉に、一瞬二月は唇を噛んだかのように見え、そこから1秒以内に表情を崩した。
「ああもう!こうなったら2人で対処しますよ!文句ありませんよね?結城先輩!!」
「ああ。来るぞ!」
その言葉と同時に、目の前に、黒く爛れ、所々溶け出している人型の大きな異形の怪物と1人のハット帽を被ったメガネの中年男性が現れた。
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