第22話 新たな装備【黒衣】

 翌日。


 いつもと変わらぬ配信を行って、とある場所に向かう車の中に乗った。


 それにしても暗黒獣が現れてからまだ一週間ちょっとしか経ってないことに驚きだ。


 あまりにも一気に変化しすぎて自分が取り残されている感覚だけど、レナや咲、冬ちゃんがいて、何とか現実を実感することができている。


「それにしても最近同接数がますます増えていきますね。先輩」


「あはは……五百万人を超えているものな」


 最近レナと冬ちゃんの人気が大爆発していて、コメントは二人の名前で埋め尽くされている。


 たまに『英雄組も頑張れ~』と言われるけど、これは俺と咲をセットにしたものだ。


 そんな俺達を献身的にサポートしているリサも、ドローンの姿と声だけなのにじわじわと人気が出始めている。


 配信はそんな感じではあるが、最近狩りが効率よく、得られる経験値の高さのおかげでレベルがどんどん上がっている。


 金属スライムで一気に上昇したレベルも、定期的に上がっているし、レナ達も順当に上がっているそうだ。


 こうしてパーティーを組んでいると、全員が経験値を分割して得られるようになるのは、ダンジョンの不思議の一つでもある。


 まるで誰かに見られているような、誰かにそう設定されているかのような感じだ。


 車が停まった場所は、塀に囲まれた施設の中。


 車を降りると久しぶりに会うグランドマスターが出迎えてくれた。


「いらっしゃい。英雄殿」


「お久しぶりです。英雄だなんてそんな大した……」


「いやいや、表でも影でも英雄なのだから、もっと胸を張るといい」


「はは……妹の力のおかげです」


 伊吹議員の一件はほぼ妹の実力だ。俺がやったのはただ演じただけ。


 グランドマスターは不敵な笑みを浮かべて、俺達を建物の中に案内してくれた。


 部屋に案内されると、二人の白衣を着た男女が待っていた。最初に女性の方が話し始める。


「初めまして。開発部の顧問の青木です。こちらは助手の椎名です」


「初めまして、ユウマです」


 みんなも紹介した。


「ではさっそくですが、こちらのスーツを説明させていただきます」


 黒いゴム製っぽいスーツが二つ、テーブルの上に置かれていた。


「こちらのズボンタイプは男性用です。こちらのスカートは女性用です。中はスパッツになっております」


 ちらっとスカートを摘まみ上げて中を見せてくれる。


 急いで視線を外した。


「えっと、すみません。これがどういうものが一切聞かずに来たものでして……」


「なるほど! はい。それらもこれから説明いたします。これらのスーツは、通称【黒衣こくい】と呼んでおります。Aランクダンジョンで現れるブラックスライムの素材を使った防具でして、着ている感覚がないほどに軽く、動きやすい上に、最大の特徴は高い防御力と上昇する能力が大きいものとなっております」


「これが黒衣だったんだ……」


 冬ちゃんがボソッと呟いた。


「英雄殿から装備を求めているということで、ちょうど完成した試作五号を使っていただきたいと思いまして、使い方は非常に簡単で――――」


「完成したのに名前が試作……」


「このブレスレットを装着していただき、ここのボタンをポチっと押してみてください」


 強制的に俺の左腕に少し分厚めのブレスレットを付けられた。付けた感触は悪いモノではなく、肌に付着しているけど重さは全く感じない不思議なものだった。


「こちらもブラックスライムの素材をふんだんに使っているので着用感は非常にいいはずで、肌に負担もかからないのでとてもおすすめですよ!」


 目をキラキラさせた青木さん。


「さあさあ、速く押してみてくださいっ!」


 言われた通り、ブレスレットの上部に着いているボタンに手をかざすと、耳元に「黒衣を装着しますか?」と女性の声が聞こえてきた。


「っ!?」


「装着してくださいっ!」


「は、はい」


 するとブレスレットから俺の体の内側から不思議なエネルギーが通る感覚があった。


 これは咲が使ってくれる補助魔法に似た感覚だ。


 次の瞬間――――俺の体内から黒い液状の何かが溢れでて衣服ごと取り込み、黒衣の形になった。


「「「「おお~」」」」


 みんなの歓声が響く。


「さすが英雄殿! とてもかっこいいですね!」


 テーブルの上に置かれていたスーツとは全然違う形で、体にフィットした黒いスーツなのは変わらないが、装飾品がいくつか付けられているし、何故かそれを操作できそうな感じもある。


「黒衣の一番の特徴は、装着した人の能力に合わせて具現化した上で、成長することになります。それもあって黒衣の形に同じ形は存在せず、英雄殿の黒衣は英雄殿専用のものになります。自分の個性としっかり向き合うと強い味方になってくれますよ~」


「なるほど…………これとか動かせそう?」


 背中や足、腕にあるベルトのようなものを自由自在に動かせる気がしたので、動かしてみると、思ってた通りにうねうねと動かすことができた。


「お兄ちゃん…………なんだか魔物っぽいよ?」


「!?」


 急いでベルトを収納する。


「先輩…………触手が好きなの?」


「や、やめろおおおおお!」


 男性陣からはそうでもなかったが、女性陣からは冷ややかな視線を送られた。


 言われた通りに使ってみただけなのに…………。






――――――――――――――――――――

 【あとかき】

最新話まで読んで頂きありがとうございます。

色々と作品作りに悩みがあり、それを打ち消すために新作を投稿しました。

今度こそ……今年もランキングトップを取って三年連続を達成するために頑張っていきます。


心が熱くなったり、心から笑える物語を届けられるように頑張っていきますので、【作品フォロー】と【★で称えるのレビュー】をいただけますと、大きな励みになります。



 【ひとこと】

黒衣の形がイマイチ分からないよ~という方は「ガンダム キラ 衣装」で検索するとそれっぽい黒い服にベルトが付けられた衣装が出てきます!大体あんな感じを想像してもらうといいかと思います


ということで、作者大好きなガンダムSEEDの映画が遂に決定してうきうきしております!来年一月らしいですね~いや~楽しみで待ち焦がれております!

ガンダムSEED FREEDOMは2024年1月26日劇場公開となります~!(何故か唐突な宣伝)


シードまだ見てないよって方は、夏休み冬休みを利用して見てしまいましょう~!50話くらいあって大変ですけど、キラくんかっこいいですよ~!

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