第16話 ドS?それともドM?
『魔物が疲れるって初めて知ったぞwwww』
『この配信おもしれーwww』
俺を殴り続けていたゴリラの動きがどんどん鈍くなり、息が荒くなり始めた。
「へぇ……魔物にもスタミナって存在してたんだ。知らなかった」
「魔物だからスタミナが無限ってことはないんだね。そういうもんだと思い込んでいたのがちょっと恥ずかしいな」
「先輩。私もですよ。うちのじいちゃんも配信を見ているはずなんで、今頃大興奮していると思いますよ」
「グランドマスターでさえもか~そりゃそうだよね。魔物にスタミナがあるって発覚するのが初めてだもの。ユウマくんってやっぱりすごいね!」
「まあ……根性はあるリーダーのようで安心しました」
「そりゃ根性あるわよ~千日連続フルタイム配信をしたんだから」
「はあ!? 千日連続フルタイム!? ダンジョンで!?」
「そうよ? 知らなかったのね」
「…………」
ようやくゴリラを倒した。
「や、やっと倒した!」
冬ちゃんがスタスタと俺のところに歩いてきた。
「ん? どうした?」
「先輩…………頭おかしいっすね」
「えっ!? ええええ!?」
そのまま通り過ぎると、ゴリラが粒子となり消え、その場に残ったゴリラの素材をマジックポーチに入れる。
「レナ……やっぱり俺……ダメなのかな……?」
「ううん。ものすごい――――誉め言葉だよ?」
「えっ? そうなのか?」
「うん。本当に」
冬ちゃんをがっかりさせなかったのならいいか。
少しだけ口角が上がった冬ちゃんが見えた。
それから俺達はダンジョンに潜り、どんどん魔物を倒し続けた。
やり方というのは――――俺がボコスカ殴られながら集めた魔物の群れをレナと冬ちゃんが一掃するということ。
「先輩~ガンバレ~」
冬ちゃんは魔物を倒して素材を回収すると、シートを引いて座ってお茶を飲み始める。
動き回るのがめんどうだから、集めてきてと言われて、人生初【トレイン】という行為を繰り返した。トレインというのは、魔物を惹きつけたままたくさん集めて、魔法使いなどの広範囲魔法で殲滅させる戦法だ。
魔法となると一日使える量が決まってるので、効率よく狩る方法として有名だ。
『Bランクダンジョンでトレインしてる奴はじめて見たんだけどww』
『しかも殴られながらくるのめちゃジワる』
『レナちゃんと冬様の容赦のない攻撃も見ててめちゃ気持ちいいな!』
『英雄の配信を楽しみにしてたけど、これはこれでありありのあり!』
『お前ら、分かってないな……ここはやはり、トレインしてきたお兄ちゃんを毎回心配する妹ちゃんが可愛すぎるだろおおおお! 尊すぎだからああああ!』
『同士がいたああああ! やっぱり最強はリサちゃんっしょ!』
どうやらリスナー達も楽しんでくれているようでよかった。
金属スライムのおかげでレベルが上がって、【金剛支配者】なんて大それたスキルまでもらえて防御力がものすごく上がった。
でも体感的に攻撃力は一向に増えてないように感じていたし、現実はその通りだった。
増えたチャンネル登録者からリスナー達を楽しませられるか心配していたけど、仲間達のおかげで楽しい配信ができそうだ。
ちょうど配信時間が三時間に近づいた。
「では本日のダンジョン配信はここで終わりになります。またよろしくお願いします」
俺に合わせてみんなも挨拶をしてくれる。意外に冬様もちゃんとやってくれる。
『配信面白かった! また見にくる!』
『またな~!』
『配信乙~!』
ものすごい温かい
「じゃあ、今日は明日のために帰るとするか」
「え゛、まさか……明日もダンジョンに潜るんですか? 先輩」
「ん? 潜るよ?」
「えっ…………いやいやいやいや」
「ん? どうかしたのか?」
「先輩? みんなが先輩みたいな化け物だと思わないでくださいよ。ほら、見てください。咲先輩の顔色が真っ青ですよ? 珍しくレナ先輩も顔色が真っ青でしょう?」
「えっ!? み、みんな? どうしたんだ?」
「ゆ、ユウマくん? さすがに……毎日ダンジョンに潜るのは……そっか……ユウマくんは千日連続配信達成してたもんね。ちょっと油断していた……」
「ユウマくん……二日連続は死んじゃいますよ……」
あたふたする俺に大きな溜息を吐いた冬様が肩をポンと叩いた。
「はあ……先輩? ダンジョンに
「う、うん」
「瘴気に当てられた人は、外の空気で瘴気を浄化させないと、ものすごく体調が悪くなるんです」
「そうなのか? 確かに探索者ギルドで最初にそう教わったけど、俺は何ともないぞ?」
「だ・か・ら! 先輩みたいな化け物と私達みたいな普通の人を比べないでください!」
えぇ…………俺からすれば、あんなに強い冬ちゃんの方が化け物みたいなんだけどな。
「分かった。じゃあ、明日は俺とリサだけ配信するよ」
「「「…………」」」
「じゃあ、今日は撤収しよう~」
「先輩って……鬼っすね」
「ユウマくんって実はドSかしら」
「意外とドMなのかもしれませんよ?」
みんな……どうしたっていうんだ……。
俺達はそのままダンジョンを後にした。
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