第41話 夏鈴十六歳

 夏鈴の家までは自転車で行くことにした。

 外環状線を一直線、十キロ弱の距離、三十分ほどで家の前についた。

 彼女に言われた通り、裏から入って、美玖の部屋に行くと扉をノックした。


「待ってた」

 靴を脱いで、部屋に入ると、何となく前と室内の模様が違う。

「気づいた? ここ私の部屋になったの」

「吉村さんは?」

「やっぱり、知らなかったのね、お姉ちゃんたら内緒なんだ」


「内緒?」

 なんかあったのか、美玖とはクラスが変わってから、あまり顔を合わしていない。

「学校に坂本って先生いるでしょ」

 坂本、そんな教師いたっけ。全部の教師を覚えているわけではない。授業も部活もなければ、わからない教師もいる。

「地味そうだからなあ、生物の先生」

「あ、俺、生物とってないから」

 一応理系だ、物理と地学をとっている。


「その坂本先生がどうかしたの?」

「お姉ちゃんと再婚する」

「は?」

「今日内輪の結納、だから誰もいない」

「卒業したら?」


「もう同棲してる、一部の教師たちは知っているはずだけど」

 初めて聞いた。もちろん彼女との中は、誰にも秘密である以上、亮の耳に情報が入ってくることがなくても、不思議ではない。

「だから、この部屋は私のものになったの。で、この部屋にも、私の身体にも最初のお客さんとして、住谷亮君をお迎えしました」


「身体って」

「コンドームもタオルもいっぱい用意してあります。私も十六になりました、亮くんにほったらかしにされたままだったから、呼びました」


「ほったらかしって、夏鈴ちゃん俺とするつもりだったの? あれは雅美ちゃんのために」

「にぶちん、ずっと好きだったのに。毎日電話来るかなって楽しみにしてたのに」

「そりゃ無理でしょ、電話かけたら吉村、あ、姉さんにもろばれでしょ」

「じゃ、私のこと嫌いじゃないのね」

「嫌いならここに来ない」


 夏鈴は、亮に抱きついた。

 見た目は細いのに、意外と柔らかく、ちゃんと胸が当たる。

 キスをしながらお尻に触れるとボリュームがあった。

 そういえば、美玖もグラマーな肉体を持っていた。


「脱がして」

 亮は夏鈴の足元に膝をつくと、スカートの中に手を入れた。パンティーのゴムを確かめると、一気に引き下ろした。

「きゃ、スケベ」

 薄いピンクの生地にところどころ、より濃いピンクの花が散らされている。


「もう、パンツから脱がすか、普通」

「ね、変わってていいでしょ」

 Tシャツの裾をもってまくり上げる。


「や、やだ、それ怖い」

 夏鈴が亮を押して逃げようとした。その勢いが尋常じゃなかった。

 青ざめて泣きそうな顔をしている。


「どうしたの」

「ごめんなさい、昔、嫌なことがあって」

「もしかして茶巾にされた」

 茶巾とは、スカートをまくり上げて頭の上で結ぶ、いじめを言う。やられた方はパンティー丸出しで誰かが助けてくれるまで無防備になってしまう、恥ずかしさと恐怖は計り知れないだろう。


「うん」

「中一のころ、スカートで」

「女の子たちに」

「うん」

「それを助けてくれたのが雅美なの」


「そしたら今度は二人でいじめにあった?」

「うん」

「まだいじめられてる」

「ううん、今は住谷先生もいるし」

 一応、雅美たちに関する一件は春奈のことも含めて、母親の耳には入れておいた。


「そのお礼の意味もあって、今日、住谷さんに来てもらいました」

「お礼なんていいのに」

「雅美とやったでしょ、ずるい」

「だから、私も抱いてほしい、ほんと処女だから、住谷さんに奪ってほしい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る