第39話 寺の娘

「ねえ、こうこ先輩とやってるんですか」

「内緒」

「私そそらないですか」

「やりたいよ、でも、それだけの関係になっちゃうよ」

「いいですよ、それでも」


「好きな人とやれたら、そのあとのことなんてどうでもいい。どうせそのうちだれかとやるんなら、一番好きな人としたい」

「夏休みがチャンス、だめですか」

「なんで? 俺のことそんなに好きか?」

「うん、先輩になら今ここで裸になれって言われたらなれる」

おいおい、こいつ大丈夫か。


「あ、その顔疑ってるでしょ、じゃ脱ぐ」

祥子は、Tシャツの裾に手をかけ、ブラの下まで一気にまくり上げた。

「ちょ、ちょっと待って」

肌が思った以上に白い。

「わかった、わかりました」

「ほんと、じゃあ、今夜は」

「いいけど、うちは無理だよ、こうこにばれるし、今日は親もいる」

祥子はニコッと笑った。


「今日うち誰もいないから」

「そういえば、祥子ちゃんの家ってどこ」

弓削ゆげにあるお寺」

「お寺ってあの」

「私、寺の娘なの」

「そうなのかあ」

何となく嫌な予感がする。


「先輩、幽霊って信じます?」

「信じるも信じないも、俺見えるから」

「やっぱり」

「どういうこと」


祥子は困った顔をした。

「先輩、亡くなった彼女いますよね」

「見えるの」

「何となく、大丈夫、ふたりとも先輩のこと恨んでませんから」

「いや恨まれる覚えはないから」


まさか、今日行ったら二人が出てくるわけじゃないよね。

「お盆だから」

「まあそれもいいか、ふたりとも会いたいし」

「そうなんですか、うらやましいな」

「あ、俺みんな好きだから」

「でしょ、だから先輩好きなんだ」


「このまま帰りに一緒に帰る?」

「いいんですか?」

「うん帰ると出てこれなくなりそうだから」

祥子が「くっくっく」と笑った。


「先輩なんか奥さんがいるみたい」

「まあ近いものがある」

二人で笑った。


祥子の家は本当にお寺だった。八尾市弓削は電車で行けば、乗り換えもある面倒なところだったが、自転車なら外環状線を一直線だ。

国鉄関西線の弓削駅の裏にその寺はあった。


祥子の家は寺ではあるが、彼女と家族が暮らす住居部分は普通の家だ。

「祥子は一人っ子なの?」

「ううん、兄ちゃんがいる、今大学に行ってる、仏教系の」

「じゃあ、お兄さんが寺を継ぐのか」


などと話しながら祥子はもう服を脱いでいる。ピンクの普通のブラとパンツ。

女の子の下着姿は、見慣れているはずなのに、やっぱりドキドキするのは不思議だ。

「汗かいてませんか、シャワー浴びましょうよ」

まあだいたいいつも通りのパターンで、夜はすすむ。


で、そうなって、祥子も無事開通した。

「うれしいなあ、これで私も先輩の女の一人だ」

「うれしいかそれ」

「もちろん」


「最初が先輩でよかった」

「大丈夫だった?」

「ものすごく痛かった、これ大きいから。熱いし」

だろうと思う、彼女の膜はしっかりあった。

引き裂くのは結構大変だったが、引き裂かれる方はもっと大変だっただろう。


「そのお二方は初めてじゃなかったから、私の痛み分けてあげちゃいました。先輩とするのとっても嬉しいそうです」

予感があった、久美さんと佐紀さん。お久しぶりです。元気出したかって聞くのも変ですよね。なぜか亮は涙がこぼれた。

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