第37話 またまた司書

あっと言う間に一年がたち、こうこは何と看護学校に進学した。

「どうして?」

「だって、手に職をつければ、亮がどこに転勤してもついていけるじゃない」

「俺受かるかどうかはまだわかんないよ、難しいし」


「わかってる、でも亮は受かる」

 亮が目指しているのは、気象大学校という特殊な学校だった。防衛大学校などと同様の給料をもらいながら気象庁の中堅職員になるための勉学訓練を受ける学校だ。


 千葉の柏にあり四年間の寮生活を送ることになる。たぶんその後は全国転勤だ。こうこはその時にどこでも仕事につけると考えているのだろう。

「わかった、頑張るから」


「たぶん、今までみたいしょっちゅうは逢えなくなるけれど、浮気禁止だからね」

「こうここそ医者にフラフラ引っかかるなよな」

「あ、それもいいかも、今まで浮気された分お返ししようかな」


「できないようにしてやる」

「バカだめだって、今日は」

 女の子の日だったみたいだけれど結局、そういうことになった。


 受験勉強は、家ではなく図書室でやっていた。

 亮の学校の図書室は、職員室などのある棟の三階でにあった。利用者は少なくはないが、真面目に勉強をしているものがほとんどだ。


 亮は図書室は好きだ、図書室にいるというとさぼっているとは思われないのが何よりいい。そしてなぜか、司書室にも自由に出入りができるようになる。

 本の整理や補修を手伝ったりすることもあって司書の先生とも顔なじみだ。


 高校の司書は野添奈々という二十代後半の女性で、カムイ伝を全巻並べたり、浮浪雲と土佐の一本釣りが好きという、人だ。何か今度ははだしのゲンを並べようと画策している。

 亮とは考え方は全く違うが、そんなことを持ち出して、高校生活をつまらなくするほど馬鹿ではない。


 誰も知らないが、司書の野添奈々とは昨年の夏からできている。

 もちろん、こうこにも典子先生にも内緒だ。

 たまたま司書室で昼寝をしていたら、後ろから抱きつかれたのがきっかけだった。

 そういう立ち位置の人だから、もちろんというかフリーセックスのという思想も受け入れている。

 たまったものを処理するにはもってこいの女性だった。


 夏休み、学校はクーラーが効いていた。

「ねえ、こっちはどうしてるの」

 胸を押し付けながら、ジーパンのファスナーをさっさと降ろそうとしている。

「え、その、一人で」

 耳元の吐息を感じながら、小芝居を打ってみる。


「ふうん、彼女はやらしてくれないんだ」

 こうこと、一緒のところを見られたに違いない、というよりもこうことの仲は隠しているわけでもないから、亮を知っている人はみんな知っている。

「高校生ですから」

「じゃあ、真野先生は?」

「え、」

「なんだばれてんのか」


「やっぱり、君ってさ、真面目そうな顔して、けっこうやってるよね」

「やっているって、これのこと」

 亮は、奈々のスカートの中に手を入れた。

 予想はしていたが、彼女は履いていなかった。亮の周りに来る女性は、ノーパンの率が高い。

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