第27話 琵琶湖一周
まあ慌てることもないし、たまたま相談に乗っただけで夏鈴たちのことは、何か動きがあるまで置いておいた方がいいかもしれない。
「ふうん、偉いね。手を出さなかったんだ」
こうこが本気で感心したように言う。
「あのな、そんなにしょっちゅう女って騒いでいるわけじゃないよ」
「そう?」
「なんか信用ないなあ」
「あるわけないじゃん、今までの見てたら」
まあ、言われても仕方はない。
「それは置いといて、土曜日休みの手続した?」
「うん、親に書いてもらった」
「親に話したの? 俺と行くって」
「うん」
「よく許してくれたね」
「私信用あるから、それに泊りがユースホステルでしょ」
H高の創立記念日は十月の十一日だ、つまり毎年必ず体育の日と連休になる。今年は金曜日、つまり土曜日を休めば四連休になる。
そこで、こうこと二人で琵琶湖一周に挑戦することにした。
今まで、日帰りで奈良や京都方面には走っているが、宿泊ツーリングは初めてだ。
二人とも山岳部だけあってコッフェルやストーブはあるが、二人で使えるテントはもっていない。部から借りるのもいいが冷やかされるのが確実なので、ユースホステルを使うことにしたのだ。
ユースの欠点は、部屋が男女別ということだが、ツーリング中まで抱き合う必要はないだろうということになった。体力温存だ。
実は、最終日だけは大津のホテルを予約してある。それは内緒だ。
「お母さんが、ちゃんと避妊してもらいなさいって」
亮は飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。
アールグレイだ、小説で覚えてカッコつけて飲んでいるうちに、普通に飲むようになった。こうこも好きだというので二人でいるときはよく飲んでいる。
「ばれてんの、まさか話したの」
「まさか、でも、ばれちゃったみたい。母親はすごいね。もしかしたら血の付いたパンティー見られたのかも」
「やばいなあ、おばさんに顔合わせられないじゃない」
「亮のこと信用しているみたいだよ、どこ見て信用してるんだかって気もするけど」
「じゃあユースでなくてもよかったじゃない」
「だめだよ、おおぴらにやったら、親も注意しないわけにいかなくなるじゃない、あくまでも健全交際」
「じゃ、今日はキスだけ」
「やだ、明日からしないんだよ、今日はいっぱいして」
自分の家から、亮の部屋にくるまで、こうこは階段を三階降りて十五メートル歩いて階段を五階昇る。その間に人に合わないわけでもないのに、こうこはワンピースの下には何もつけていない。
今日だけではない、いつもこうこはすぐできる姿でやってくる。
「おはよ、元気」
赤のボーダーのポロシャツと、黒の短パンにソックス。実はお揃いだ。亮は恥ずかしかったが、こうこに押し切られた格好で着ている。
「昨日誰かさんに二つも搾り取られたから」
「私は亮のもらって元気、さあ行くよ」
三泊四日、琵琶湖一周としてはのんびりだけど、二人にとっては楽しい旅の始まりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます