第26話 急展開
「え、シャワー浴びるの早すぎません?」
少女二人は、バスルームから出てきた亮を見ていった。亮は結局シャワーを浴びずに出てきたのだから当然だ。
そう言いながらも彼女たちもまだ服を着たままだ。
「もしかして、住谷さんなんか気がつきました?」
夏鈴が心配そうな顔で聞いた。つまりは彼女たちは何かを企んでいたことを白状したようなものだ。
実は、亮は何も考えていたわけではない。単にシャワーと石鹸の使い方がわからなかっただけなのだ。こんなお金持ちの家のことはよく分からない。
「うん、話がうますぎる。本当のことを話してくれるかな」
「怒りませんか」
夏鈴が、恐る恐るといった様子で聞いた。
「もちろん、でも本当のこと話してね」
「私、学校でちょっと目を付けられてて」
雅美が言う。
「彼女、美人で、お金持ちだから、ねたむ人がいるの」
夏鈴の言うのはわかるような気がする、だけど、それと今日の自分へのことがつながらない。
「そのいじめてる子たち、後ろ盾の高等部がいるんだ」
「だから、母さんをってこと、それを動かすために俺と」
「うん、言うこと聞いてくれなきゃ、いやらしい写真を撮って脅そうかなって」
「ったく、あやうくその毒牙にかかるところだったじゃないか」
「ごめんなさい」
雅美と夏鈴がしおらしく頭を下げた。
「で、どうしてほしいの、母さんに守ってくれって頼むだけでいいの」
雅美の顔がパッと明るくなった。
「いえ、学校で一度お話しさせていただければ、私は住谷先生と知り合いというだけで高等部に行っても何とかなります」
「わかった、かあさんにはなしておくよ」
「ありがとうございます。お礼は」
「何言ってんの、こんなんでお礼なんて言ってたら、からだぼろぼろになるよ」
「え、やっぱりお礼は体ですか」
雅美が慌てて手で胸をかばうしぐさをしたので、夏鈴も亮も爆笑してしまった。
「冗談だよ、お礼なんかじゃなくて、俺に抱かれたいと思ったら、その時に処女を頂戴。あ、もちろん夏鈴ちゃんのも受け付けるよ」
次の日、亮は久々に恵美に電話をかけた。高等部の女子について知りたいことがあったのだ。電話だけじゃということになって、梅田で待ち合わせることになった。
「よ、元気、またきれいになったね」
「亮君も背が伸びたんじゃない?」
実際会うまではどんな顔をしようかと思ったが、会ってみると話は進んだ。
「亮君は相変わらず、女の子とっかえひっかえなの」
「人聞き悪いなあ、そんなことはないよ」
「こうこさんいい人だから、泣かせないでね」
「こうこのこと知ってるの」
「当たり前、小中学校の先輩だったし」
「いやそういう意味じゃなくて、付き合っていること」
「そりゃあ、元彼のことぐらい知ってるよ」
恵美も今の警察官の彼氏とはうまくいっているらしい、よかったと思う。
「で、誰って」
「山口和美とかいう一年らしいんだけど」
「ああ、あいつ」
その言い方だけで、恵美が山口という女子をどう思っているかが分かった。
「学年主任のおやじなんだ、男が」
「何それ、みんな知ってんの」
「生徒はね、多分、住谷先生とかは知らないと思うよ」
生徒には生徒だけの社会がある、多くの教師たちは表面しか見ていないものだ。
「そうか、どうしようかな」
「亮がやって、おとなしくさせてしまえば」
「なんか、学年主任が次のに乗り換えそうとか、二股とかだから、私紹介してもいいよ、来週は」
「二三日考えてもいいか? こうこにも話さなきゃ」
「話すの? すごいね。許してくれるの?」
「言えばね」
「じゃあ、今日これから私としても言うの?」
「言わない」
「なんで、前の彼女だから、体だけじゃなくなる」
「え、やけぼっくいにって話?」
「うん、基本、女の子にそれはないっていうのにさ、こうこは昔の彼女にはこだわる」
「こうこさん一途なんだね、普通は別れたら次の人なのにね」
「多分こうこも別れたら振り向かないのは一緒だと思うよ、まあ、気分の問題かな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます