第18話 胸まで
考えてみれば、ばれて当然だった。この団地に同じ高校の生徒がいることを、完全に考えてなかった。
あれ? でもそれは変だ、亮は気が付かなくても先生は生徒の住所ぐらい知っているに違いない、しかも自分の部の生徒がいることを忘れるはずがない。
その証拠に、亮は先生に住所を教えていないのに、彼女は車で迎えに来た。
「そういえばそうだよね、ばれても構わないって思ってるのかなあ」
「ここに、うちの高校の人どれくらいいるの?」
「知らない、でも私と亮の棟はほかにいない」
つまり、こうこにならばれてもいいということか。
「うーん、私はそんなことに興味がないって思われているのかも」
「ないの?」
「なくはないけど、なんか学校では」
「ふうん、今まで好きになった人はいないの」
「いない」
こうこはきっぱり言った。
「そうか、じゃ人生で初が俺かあ」
「まだ惚れるとは言ってない」
「うん、いいよ、そうやってパンティー見せてくれるだけで」
クッションが顔に向けて飛んできた。
「階段とかでも見せまくってんじゃないの」
「あ、みせつけてるよ。って、アンスコはいてる。ミニの時は。そうじゃないと自転車が面倒だから」
「そうなの、じゃあ、今日は何で」
「わざわざ言わせたい? いじわる」
つまりは亮だからということ?
「もう一回キスしよ」
「やだ、変なことする気でしょ」
「しないって」
「こうこは自転車好きなの?」
約束通りキスだけで体を離し、亮は聞いた。乗っている自転車が珍しい。ちょっとは名の知れたサイクリングショップのオリジナルだ。
「やっぱりわかった? 亮のもそうだよね。サイスポで見たことがある。京都の」
「前に住んでいたところのそばなんだ、でもこうこのよりは安いしまだ知られてない」
「亮がわかると思ったから、今日はランドナーで行ったんだ。いつもは普通のだよ」
「こんどサイクリングいこうよ、明日香でも」
夏には泊りで琵琶湖、と言いかけたがやめた。もう少し時間をかけたところで逃げられることはない。
「いいよ、そのうち泊りで行こうか。まず琵琶湖一周とか」
「ばか、やること以外考えないの、まったく」
「健全な男子だから」
「べーだ、真野先生とやればいいじゃん。私はほかの人みたいに、やって捨てられるの嫌だから」
「捨てないし、連絡来なくなったのは、みんな向こうからだから」
「亮が自分のものにならないって、みんなそう思うんじゃない? だから私もゆっくり考える」
「胸だけ触りたいなあ」
「やだ」
「お願い」
「なんで、そう触りたがるの」
「見せつけられてるし」
「何それなら街でみんな触りたいってことになるじゃない」
「そうだよ、やらないけど」
「当たり前。やったら二度とキスもさせない」
「胸だけだからね」
「ん、キスからね」
こんどのキスは舌を絡めた。
シャツの上からゆっくりと胸をまさぐる。
こうこが悩んでいるのがはっきりわかる。
今日はこれぐらいがいいかもしれない。亮はこうこを離した。
「ばか、すけべ。今日は帰る」
怒ったかな、ちょっと焦りすぎたかな。
「明日の朝、自転車置き場、八時ね」
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