第17話 こうこ

「別に二人が何をしようといいけど、ばれると面倒だよ」

 そうかな、今まで別にどうもなかったけど。それが顔に出たのかもしれない、先輩は面白くなさそうに口を尖らせた。

「じゃあ、みんなに言いふらしちゃおうかな、一年の住谷は真野先生と」

「ちょちょ、まってください、別にわざわざばらすことは」

「そうだよね。二、三年の男子の半分くらい敵に回すよね、おおっぴらにしたら」


 亮は正直驚いた、典子先生にはそんなにファンがいるのか、じゃあなんで俺と。

「住谷って面白いね、考えてることが顔に出るんだ。そうだよ、だから私も興味を持ったんだ、どうして真野先生をものにしたか、よっぽどいいものを持っているのか、上手なのか」

 随分ときわどいことを口にする、けどどこか芝居がかっているような。


「自分の身体で確かめようってことですか」

 亮も話を合わせてみた。

「うーん、それはわかんない。興味はあるけど、まだ経験しようとは」

「じゃあ、先輩、ピンクのパンツ見せつけるのはやめてください」


 先輩は、え、っという顔をしてミニスカートの上にクッションを乗せた。

「えっち、ずっと見てたの」

「ブラも見せつけてるから趣味なのかと」

「もう、よくそういうことぺらぺらと言えるね」


「ええ、まあそれなりに経験を」

「そうなの、それ聞きたい」

「ただじゃいやです」

「お金取るの?」


「まさか、払ってもらうのは」

「処女はあげない」

「誰もそんなこと言ってないし」

「ちがうの、なんだ。身体で払えって言われてみたいのに」


 亮は吹き出した。

「先輩面白い、って言うか変わってるって言われませんか」

「たまにしか」

「まあいいです。お代は、真野先生とおれのことを誰にも話さない、でいいです」


「なんだ、それだけ」

「じゃもう一個、俺と付き合うこと」

「やっぱり処女狙いじゃん」

「いずれは、したいですよ。だって、先輩俺の好みだもの」


 先輩は目大きく見開いた、多分よっぽど驚いたのだろう、そして真っ赤になった。

「私告白されてるの?」

「ええ、まあ」

「初めてだ、うれしいなあ」


「俺なんかに告白されても?」

「もちろん、でもそしたらなおさら、今までの話を聞きたくなった」

「いいですけど、ひかないでくださいね、かなりひどい話もありますから」

「どんなの」

「脅してレイプまがい」


「住谷、亮って呼んでいい? 亮って暴力つかったりするの? そうはみえないけど」

 先輩は、ほんの少し後ずさった。まあ。そうだろうと思う。

「それはないです、もう少し頭使って、です。初めての相手小学校の担任だったんだけどその時に」


「えー、うそ。出だしからそうなの」

「うん、聞く? 呼び方なんだけれど、俺は先輩でいい?それともなんかあだ名とか」

「こうこ、って呼ばれてる。よしこより好きかな。そう読んでくれたらうれしい」 

 亮は、先輩の求めに応じて、薫から史乃までを一気に話した。もちろん薫以外はほほダイジェストだ。


「ひどいと言えばいいのか、わかんないや。ねえ、私と付き合ったら私はどれくらいの順位に入るの」

「みんな一番だから」

 そういうと亮はいきなり先輩を抱きしめキスをした。


「ん、んん」

 先輩は逃げようとしたがやがておとなしくなった。腕がおずおずと背中に回る。

 いけるかな、調子に乗ってスカートの中に伸ばそうとした腕は、がっちりと押さえられた。


「ばか、ひどい。いきなりなんて」

 先輩はすっかりおとなしくなった。

「SEXはまだ怖い、それじゃだめ?」

「ううん、待つよ、こうこがその気になるまで」

「ありがと、ゆっくり付き合いたい、亮のこともっと知りたいし」


「真野先生、別れなくていいよね。英語教えてくれるって言うし」

「女を利用するタイプか、付き合うのやめようかな」

「先生はそれでいいって。じゃあこうこはやっぱりやめる? キスしたのに?」


「亮って自信家なんだ、わかった。どうなるかわからないけど、これからよろしく。明日から一緒に学校行こうね」

「うん、で、さ、一つ聞きたいんだけど、なんで俺と先生のことわかったの?」

「え、マジで気付いてないの? 二人が話しをしてたのは、うちの真下だよ。あとは見てたら、というかカマかけた。恵美ちゃんのこともあったし」


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