第16話 シースル―の先輩
高校では、当たり前だけどそういう関係はおくびにも出さない。顧問ということもあって、時たま部活に来ることもあるけれど、こっちはしがない一年生。話をすることもない。
時たま目が合って微笑みをくれることもあるけれど、亮が一方的に服の中身とかあの時のしぐさを重ねてい居るだけ。誰にもばれるはずはなかった。まあ、ばれてもどうということもないけれど。
「住谷君、ちょっと話があるの、帰り付き合って」
二年生の
髪をポニーテールにした彼女は、スタイルがいい。彼氏がいるのか、いないのかはわからない。少なくとも部の中で付き合っている相手はいないようだ。ピンクのブラジャーに包まれた胸がシースルーのブラウスから透けて見える。
さすがに雑誌でモデルたちがしているようにノーブラシースルーではないが、なかなか刺激的だ。この辺りの高校はほぼ私服ということもあり、通学の電車はこんな服装の女子高校生ばかりだ。サラリーマンは楽しいだろうと思う。
残念ながら亮は、自転車通学なのでそういう楽しい日常は無関係だ。
駅近くの喫茶店は高校生のたまり場だ、ここで話をしている限りはデートとは言えないらしい。あまりにもオープンだからだ。部活終わりの連中が大盛りのカレーやスパゲティを食べている。
「先輩話ってなんですか」
「ここじゃ無理かなやっぱり、真野先生のこと」
先輩は真野というところで声を潜めた。
「どうするここで話す?」
「いえ、できれば別の場所の方が」
「だよね、でも頼んだもの位は食べていこうか」
きっちり割り勘で喫茶店を出た二人は自転車を押して歩きだした。先輩の自転車もミキストフレームだけれどランドナーだ。そのミニスカートで大丈夫?
「先輩の家どこですか」
「うそ、知らないの? 君と一緒だよ」
ちょっとだけ驚いたが、それならば話は簡単だ、人目も気にしなくていいし、お金も使わないで済む。
「じゃあ、うちで話しますか、うち母親も遅いし」
「家に呼んで手籠めにするき?」
先輩は亮の顔を覗き込むようにして言った。
「先輩、手籠めって」
「古すぎた? レイプの方がよかった?」
「いや、そうじゃなくて」
「冗談よ、でも君の部屋に行ったら。ま、いいか」
先輩は自転車にまたがった、ミニスカートが翻り、ピンク色の下着がちらっと見えた。
先輩は乗りなれているみたいだ、どんどん先に行く。ちょっとばかり、本気で追いかける羽目になった。
先輩の家は、びっくりしたことに亮の住む棟の別の階段だった。
「待っててかばん置いて、親に断ってくるから」
「隣の隣の五階だよね」
「いつから知っていたんですか?」
「住谷が引っ越してきたときから」
「え、そうなんですか」
「同じぐらいの年の男だったから、気にはなってた」
「すみません」
何を謝ったんだろう、けど先輩は少し納得したみたいだ。
「すぐに彼女つくったでしょ、ちょっと面白くなかったけど、山岳部に入るとは思わなかった」
「どうぞ」
亮は鍵を開けると、先輩を先に部屋に入れた。
「何飲みますか」
「ビール」
「え、本気ですか、あるけど」
「噓よ、酔ったら襲われそうだもの」
「襲いませんってば」
「え、ショックだ、私魅力ないの?」
「いえ、そういうわけじゃ」
先輩はけらけら笑い出した。
「住谷って、女の子にいっぱい手を出してるからもっとひどい奴だと思ったら、結構真面目なんだ」
「いっぱい手を出してなんて」
「そう? だって真野先生とやってるでしょ」
「なんでそれを」
と言って、亮は慌てて言葉をのんだ、きっちり誘導尋問に引っかかっている。
先輩はニヤッという感じで笑った。
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