第7話 佐紀さん

学校で恵美は一切親しさを出さない。もう少し話してくれてもいいのに、と思う。

 クラスで恵美は航の斜め前に座っている。

 授業中など、つい恵美の背中を見ていることがあった。ついでにその中身を想像して授業中に立ってしまったことがある。


 かえって来たら、恵美の部屋のカーテンが全開になっていた。

「恵美」

「は、まだだよ」

 明らかに恵美のものではない返事があった。しまった、と亮は焦った。てっきり恵美が帰ってきていると思ったのだ。


「こんにちは、君が亮君? 恵美から聞いてるよ」

 ありゃ、クラスには内緒と言いながら。

 この人は、突然亮は思い当たった。

「恵美のおば、じゃないお姉さんの佐紀さん」


「うん、君はなかなかいい子だね、恵美の叔母の佐紀です。叔母って言っても君たちと五つぐらいしか変わんないんだけどね」

「確か大学生だとか」

「恵美は何を話したのかな、ね、そっちに行っていい」

「え、あ、はい構いませんけど」


「お邪魔します]

 佐紀さんは思った以上に背が高い、亮は百六十五センチ、よりは高い。百七十以上はあるに違いない。

「どうかした?」

「え、いや。きれいな人だなあって」

 お世辞ではない、サラサラの長髪、メリハリの利いたスタイル。胸はそれほど大きくはなさそうだが、形が文句なくきれいだ。脱がしてみたいと一瞬で思った。


「ふうん、なるほどね」

 佐紀さんが意味深にほほ笑んだ。

「君、中学生だよね。大人の女性と何人付き合った」

「え、」

「かくさなくていいよ、恵美には言わないから。というよりその雰囲気ならば、中学女子なんて一発だろうなあ」


 佐紀さんの言うには、流れるようにほめるのは、そんなに簡単なことじゃないという。

「かなりの数の人としてるでしょ。ね、恵美とはやったの」

「まだ、です」

 どうも主導権を握られている、まあ相手の方が年上だから、しかたがないかもしれないけれど。

 単に年齢が上なら今までも何人もいる、だけど佐紀さんはちょっと違うような気がする。


 佐紀さんは亮のベッドの上に座った。スリムのジーパンが似合っている。素足にペディキュア、話は知っているが見るのは初めてだ。


「なんでやらないの? 私の姪は好みじゃない? かわいそうだなあ、あの子君に一目ぼれみたいなのに」

 亮はむせかけた。

「恵美がやらしてくれないんです、ま、ゆっくりと」

「ふうん、その間は一人エッチ」

「いやまあ、その」

「ねえ、私はどう、今ちょうど別れたばかりなんだ男と」

 きた、絶対に罠だ。飛びついたら恵美に速攻伝わるに違いない。


「ありがたい話ですが、それは」

「どうして、あ、恵美にばれるから」

「とはいいませんけど、やっぱりちょっと」

「ふうん、信用ないなあ」


 いや、信用も何も、まだあなたのことよく分からないんですけれど。

 佐紀さんは立ち上がるとジーンズのボタンをおもむろに外し、躊躇なく脱ぎすてた。


 亮は思わず恵美の部屋を見た。

「大丈夫あの子、今日は塾だから、あと三時間は帰ってこないよ、知らなかった?」

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