道端のゴミと何が違うのか
「さて、今日も行くか」
朝起きて横で寝ている女を起こさないようにしながらシャワーを浴びる。
「今日は夜勤だったはずだよな」などと考えながら身支度をしていると「ねぇ、起きたの?」と声をかけられた。
「ん?あぁ、今から出るとこだよ」
ぶっきらぼうに答える。
「朝ごはん作るよ?食べてから行かない?」
明らかに引き留めようとする猫なで声。
「間に合わなくなるからまた今度な」
優しめの口調で返事をするが心の中は真逆
"そろそろ面倒になってきたな"
そう考えながらも口では「また連絡する」と言い玄関のドアを開け振り返らずに出ていく。
「めんどくさい女になってきたな、あれだけ軽かったのに」
そう呟きながら朝の日差しを鬱陶しい思いで浴びつつ向かう
足取りは重く店頭についても「なんかめんどくさいな」と思いながら抽選のために並ぶ。
「いい番号じゃなきゃ帰るか」そんなことを思いながらまぁまぁいい番号を引く。
とりあえず座りたいのには座れそうだ、今日は勝つぞという漠然な思いで打ち始める。
数時間後、現実は甘くないことを思い知る。
何も知識がないのに漠然と「これ設定ないな…」勝ってるうちにやめるか、という思いになり店をあとにすることにした。
昼下がりの時間、当然バイトまで時間はある。
「することがねえな…」
店を出てすぐにメッセージアプリを立ち上げ暇そうな女を探す。
良くも悪くも都合の良い女がメッセージを送ってきていたので暇そうだなと思い
「今何してる?」とメッセージを送る
「○○君、どうしたの?暇なの?家来る?」
即返事が来る。
どうしたものか…?こいつの家行ってセックスしてバイトまで暇つぶしするのか?
それはそれで面倒だなと頭の中をよぎる。
そんな時である。
「なぁ兄ちゃん、いつもここの店来るよな」
不意に背後から声をかけられる。
驚きながら振り向くと
いかにもっといった風貌の強面の人間がそこにはいた。
「え?まぁバイト以外することもないので割と来てますね」
咄嗟にそう答える。
次の瞬間思いもかけない言葉が相手から発せられた。
「兄ちゃんが良ければ色々話そうや、どうせ暇だろ?」
風貌といい迫力といい逆らえないと本能が告げる
「わかりました」
そう答えた僕にその男は「んじゃ近くのファミレスでも行こうか」
と、あっけらかんと言う。
初対面でファミレス?僕は内心「打ち子でもやらされるのか?」と身構えていたが、その男から発せられたのは思いもよらない言葉だった。
「兄ちゃんのこと気に入ってよ、どうだ?いちから色々教えてやるから仲良くしねえか?」
驚きの提案だった。
少しの沈黙の後「わかりました」何故かそう答えていた。
というか逆らえない雰囲気だった。
その男には少なからず道を逸れてきた人間にはわかる明らかに反社と思える雰囲気があったから。
「明日来れるか?」と聞かれ僕はとっさに「夜勤明けですけど多分だいじょうぶです」そう答えることしか出来なかった…
「んじゃここは奢るから明日の朝な」そう言い残して彼は去っていった。
連絡先も交換してないのにどうしよう。
そんなことを想いながら夜勤のバイトに向かうのだ
「明日はどうなっちまうのかな?」まるで上の空でバイトをして次の日の朝のことを考えていた。
まぁなるようになるか。
常に刹那的に生きていくとそういう考えに陥る。
不意に出会った明らかに反社の男
それに巻き込まれた僕この先どうなるのか
それは今の僕には分からない。
しかし、この出会いが劇的に運命を変えていくことになる。
それをまだ僕は知らない。
誰がために鐘は鳴る 弓引奏汰 @kanata_yumihiki
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