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 マリアベルと別れ、ハンガーに戻るとバードンは機体の調整をしていた。


「今回は強襲ですか?」

「そうだ。大型に一気にダメージ与えてそのまま離脱。後は自衛しつつ倒れるの待って、周りの奴らに紛れての撤収だな」

「なら、的が大きい事ですし、こちらの装備などはいかがでしょう」

「いいね、これなら参加賞以上狙えるな」


 1つの敵に対し一定以上のダメージを与えるとポイントが貰える。これは小型中型クラスなら大体全員に同じポイントが支払われる。何故なら人数の上限に達する前に撃破されてしまうから。しかし大型や耐久力の高い特殊なMBが相手だと話が変わってくる。攻撃参加人数が多い場合は貢献度上位10名は順位に応じてポイントが加算され、それ以外の参加プレイヤーの上位半分は10位の2/3程、残りは参加賞として10位と比べて半分以下のポイントが配布される。また大型等のボスクラスには、止めの一撃を与えたプレイヤーへのラストアタックボーナス等もある。


「それとバードン質問があります」

「なんだ?」

「先程は何故私を紹介してくれなかったのでしょうか」

「あー、あれなギルを紹介すると何かそこで話が広がりそうな気がしてさ、あまり時間をかけたくなかったんだ。面倒くさそうな感じだったし」

「ですが、そこまで悪そうな印象ではありませんでしたね」

「話てたらな、でもまぁ途中で言い出して話を延ばしてる感が出るのもな。ほらセッティングが終わったから出るぞ」

「わかりました。バードン」


 ツナギ型のパイロットスーツを着込みながらバードンはコックピットに乗り込んでいった。

 今回の装備は、右腕は肘から先が追加弾倉付きのアサルトライフル。左腕は肘から先が少し長く、横にスリットの入った円柱状をしており、珍しく『手』がついていて、連射式のグレネードランチャーを握っていた。背面は一撃離脱を想定しての追加ブースター、脚部も大型スラスターを内蔵した物になっている。そして目を引くのが上部、普通なら頭部パーツが付いている箇所に、24連ロケット砲が乗っていた。特徴的なのは前後に長く、1つの筒に3発づつ弾が込められていた。これはバードンの改造によるもので、1回に撃ち出せる弾は24発までだが、それを3回行う事が出来る様になっていた。その結果、火力を上がったが、集弾率はとても悪くなっていた。


 バードンが準備を終えると、ハンガーのロックボルトが外され、台座ごと上昇していった。送られた先は暗闇だったが、正面シャッターが動き出すと、下から少しずつ光が差しはじめ、バードンの機体コットスを照らし出す。開ききったシャッターをくぐるりハンガーの出入り口へ向け、他プレイヤーの機体の流れに乗り外に出るのだった。


 外に出ると見覚えのある黒色のタイタンフレームが目に入った。そして通信が入る。


「バードン、マリアベル様から通信が入っています」


 コール音が鳴り、ギルが何処からかを告げる。バードンは一瞬無視して後で『すまない、手が離せなかった』とかメッセージ送ればいいかなとか思たが、目の前に居てそれは無理な事に思い至り、ギルに「繋げてくれ」と返した。

 すると、ディスプレイに白地に黒で書かれた妖精のシルエットのエンブレムと『マリアベル』と書かれたウインドウが開き通信が繋がった。そして、こちらを伺うような声でマリアベルから通話が入った。


「よかった。まだ行ってなかった。バードンさん、パーティを組んでくれませんか?」

「何かあったのか?」


 バードンが探りを入れる様に返すと、内容はさっき別れた後の話だった。


「あの後、周りの男性プレイヤー達が一気に寄ってきて声をかけて来たんです。それで、聞いてもいない事をずーっと話してきたり、なんか勝手に話を進めたりと色々うるさかったから、『バードンさんと組む約束してるので』って断ってきちゃったんです。なので組んでもらえませんか?」


 バードンは、名前出しちゃったのかーとヘルメット越しに額に手を当て、何か面倒ごとにならないと良いななぁと祈りながら渋々パーティ申請を送ると「「ありがと!」うございます」の声と同時にパーティ欄にマリアベルの名前が表示された。

 余談だが、バードンが自意識過剰だったのか祈りが届いたのかは不明だが、ゲーム内ネットワークにある雑談系掲示板の某スレッドにて一瞬話題に上がったがあまり広がらず、その他の話題に埋もれていったのだった。


「入った後に聞くのもなんだけど、大型MBに行くんだけどそれでいいか?」

「いいけど、私ってメインが接近戦なんだけど平気?」

「問題ないさ、向こうに着いたら他の似たような装備のヤツの真似をすればいい、大型の上に乗って暴れているのをよく見かける」

「なるほど、上に乗っかるのね。了解」


 気を取り直すと、バードンは基地内に設置されているカタパルトに向かい移動を開始した。


「とりあえずカタパルトを使ってC-10エリアまで向かう。使った事はあるか?」


 今回敵は北に隣接したエリアから現れており、プレイヤーの基地はH-10で、10機目の大型MBはAラインの中央付近から来るとバードンは予想していた。そのために基地に設置されているカタパルトを使う事で、一気に移動し、かかる時間と燃料を節約しようとしているのだ。


「何回もあるよ、でもさっき使った時は3マスしか進まなかったけど?」

「いや、どこでも基本的にカタパルトは3マスだ。有料のオプションを使う事でもう2マス進もうって話さ」

「私お金無いよ」

「『報酬払い』ってヤツがある。それを選べばクリア報酬から天引きしてくれる」

「それってもし失敗したら?」

「今回の場合だと拠点が落とされた段階で請求される、撃破報酬は別で入るからそっちから引かれるはずだ。小型10機位なら倒してるだろ?」

「さすがにその位はね」

「ここまで来たんだ。撃破されない様にな」

「はーい」


 バードン達は基地内の四方にそれぞれ配備されてるカタパルトの内、北側に設置されたカタパルトに向かった。前には何機か機体が並んでいたが、次々と撃ち出されていきバードン達の順番が回って来た。それぞで追加オプションを頼み、バードンの機体には背面に追加ロケット。マリアベルの方はハングライダーの様な物を装備した。


「とりあえず真っすぐだ。俺の後をついてきてきてくれ」

「りょーかーい」


 バードン達は、上下にコの字型のレールで挟まれたカタパルトに移動し発射定位置に着くと、管制室から通信が入る。準備ができた事を告げるとレール上部に設置されたライトが赤あから緑に変わり、レール内部がが青白く光り一瞬の浮遊感を感じた瞬間撃ち出された。

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