1 7/8
大爆音が鳴り響き渡った。
巨体を揺らしながら突き進むスクラップゾンビは、爆弾を勢いよく踏みつけ、そして爆発したのだ。
「あぶっ……計算通ぉり!!」
バードンは足元から1/3~4位の範囲が吹き飛ぶ程度と予想を立てていた。だから、接触起爆式の爆弾が踏まれ即爆発してもギガヤンマの頭部に届かないと踏んでいた。確かに今まで使っていたB9-2なら、その予想に近い威力を発揮していただろう。しかしバードンは、今回のミッションに際し爆発力に特化した改造に作り直していた。そしてソレは1回も試される事の無いまま今日を迎えた。
「いや早いだろ! ってか今、危ないって言ったよなぁ!?」
「ハッハー! 見たかい! あの巨体が浮いたよ! 場所はともかく結果だけなら上出来さ! さぁおっぱじめるよ!」
スクラップゾンビが踏みつけた爆弾は、頭が通り過ぎてすぐの辺りで爆発し巨体を一瞬だが浮かび上がらせ貫通し上面に火柱が上がった。
想定外の火力に一瞬間が開いたが、直ぐにアルファ1が爆炎が通ったであろう位置にマーカーを付け、その部位に向け11機の機体が一気に火を噴いた。
実弾から光学兵器、グレネード等あらゆる武器が飛び交い、最後はアーネットが投げつけた火炎放射器の予備タンクの爆発で燃やされ、スクラップゾンビは比率的には1対6位で二つに分かれ歓声が上がった。
「うっし! とりあえず割れたな。後ろが動いてる。まずはチームで散れ! 一応、誰がヘイト取ったか調べるぞ!」
アルファ1の指示に従い各チーム単位で横に広がると、スクラップゾンビはバードン達、ブラボーチームの方へ向きを変えた。更にそこから3機がばらけると、バードンの方に向かった。
「ブラボー2だ!」
結果は明らかだった。爆弾で大量に吹き飛ばし、その後の総攻撃でも手を抜くことなく全力で攻撃に参加していたのだ。敵意を稼がない訳が無い。そこにグループ回線でアルファ1からの通信が入る。
「チャーリー、デルタ、タゲを取ってくれ。ブラボーは避けろ、手出しするなよ。俺たちは解体を始める」
少し時間は取られたものの、敵意は無事引き取られ、チャーリー、デルタによるマラソンと削りが再開されていた。バードンは急いでヘカトンケイルを起動させると、G.H.Hを取り出した。
右腕には大きめの肩パーツにハンマーの柄となる棒状のパーツが前後に延びていて、左腕は巨大なエンジンの様な物が肩から生えていた。
「G.H.H装備完了、続いて左右パーツのリンクを開始」
左肩に付いていた棒状のパーツか右肩へ伸び接続されると、軽く回転をすると止まった。
「シャフトの接続を確認、リンク正常。各種接続問題ありません」
バードンはギルの報告を受けるとソルダ達に準備ができた事を伝え、アルファチームの元へ向かった。
「おい上、広場の中央トコ見て見ろよ、お迎えが来やがったぜ」
「残り12分、時間としては丁度いいけど、アレ間に合うのかねぇ」
アーネットの言うアレとは、今なお巨体を誇る残ったスクラップゾンビの事だった。
「アレはキレイに半分に割ったとしても、12機じゃ削り切れねぇよ、時間がねぇしデケェ」
「どうにかならないのかぃ? バドえも~ん」
長寿国民的アニメの主人公とは似ても似つかない色気の入った声で振る。
「うーふーふーふ。……逃げのサポートに使えそうな物はある」
「似てねぇな」
「だろう?」
バッサリとソルダ。それにドヤ声で返すバードン。
「じゃぁなんでやったのさ、あと『こんな事もあろうかと』って言わないんだね」
「あっ」
「『あっ』じゃねーよ」
アーネットの指摘に、しまったその手があったかと悔しがるバードン。それにツッコむソルダそんなこんなで、アルファチームの元に着くと丁度ギガヤンマの頭を切り出した所だった。
「丁度いいタイミングだな、粗方付着物は剥がし終えたがどうだ? いけそうか?」
「待ってくれ、いまチェックしてみる」
バードンはG.H.Hに搭載されている、センサーを起動させ対象物が接続可能かチェックした。
「問題なさそうだ、これより回収に入る」
「了解だ。俺たちは向こうにまわる」
アルファチームはそう言い残すとデルタ、チャーリー両チームの元へ向かった。
「んじゃ、アタシ等はここでアンタの護衛だね」
「よろしく、なんかあったら呼ぶ」
大多数は吹き飛んだが、未だに稼働するMBは存在し索敵囲内に入ればちょっかいをかけてくる。
バードンはギガヤンマの首の断面の方へ移動し、画面に指定された位置に着くと、バードンはシートの背もたれ横から、折りたたまれたアームに接続された制御盤を引っ張り出す。そこにはボタンやスイッチ、レバー等が付いていおり、G.H.Hの操作をするためのものであった。そしてバードンはレバーの1つを倒した。
「G.H.H、回収作業を開始します」
ギルのアナウンスが入り右肩の柄が前へスライドする。そしてギガヤンマの頭に接触すると、バードンは倒したレバーを元に戻した。
「接触位置確認。誤差範囲です。固定作業に移ってください」
制御盤のスイッチの内、1つにライトが灯り点滅しはじめた。それを見たバードンは点滅するスイッチを押す。
「固定具起動」
ギルのアナウンスと同時に、右肩の一部が分離し柄を伝ってギガヤンマの頭に向かって進んでいく。頭にたどり着くなり4本のワイヤーを飛ばす、先端にロケットの付いたワイヤーは弧を描き、固定具の反対側でぶつかり合い絡まった。すると固定具はワイヤーを巻き戻し、頭を縛る。巻き戻し終わると固定具とロケットの付いたパーツから泡が出た。これは速乾性の発砲型接着剤でこれにより、ギガヤンマの頭と柄のパーツは強固に固定された。
「固定を確認、G.H.H完成しました。収納作業に移ってください」
バードンは機体の両足を踏み込ませ、アウトリガーを展開する。そして腰の左右から斜め四方にワイヤーアンカーが飛び出し、地面に刺さると更に強固に固定した。バードンはコックピット側面に並んだトグルスイッチを個気味よく下げていく。
「胸部から脚部にかけての各関節ロックされました」
ギルからのアナウンスを聞き置けると、次はG.H.Hの制御盤の点滅する別のスイッチを押す。
「左腕エンジン起動、出力上昇、いつでもいけます」
こんどはレバーを握りダイヤルを回す。左腕のエンジンが唸りをあげ、G.H.Hの左右パーツを接続するシャフトが高速で回転を始めた。
「ギア比1、……2、……3、……ギア内内圧上昇、ギア比を2に戻してください。安定、所定の位置到達まで残り10分です」
ゆっくりとG.H.Hは上へ傾き始めた。
「遅いな、ソル、姐さん悪いが持ち上げるの手伝ってくれ、このままだと10分コースだ」
ソルダとアーネットに押し上げてもらい、何とか5分程で真上まで持ち上げる事ができた。
「んでどうするんだ、回収するにはヘカトンケイルより上にないとだめなんだろ?」
G.H.Hは真上を向いたものの、その柄を地面に突き刺しどうにか保っていた。ヘカトンケイルは機体腹部側面に付いているため、それよりも上まで持ち上げなければ収納できないのだ。
「ロケットで持ち上げる隙に回収するんだと。使い捨てのロケットで持ち上げてG.H.Hを固定、柄の一部をパージ、からの回収。今ロケットの計算が終わった所」
「いけんのかぃ?」
「技研を信じろ!」
「はいフラグ―」
「うっせ、少し離れておいてくれ、ポチっとな。とりあえず回収する」
バードンは、伝統の掛け声とともにG.H.Hの制御盤にあるロケット点火スイッチを押す。続いてヘカトンケイルのコンソールを引っ張り出した。勢いよく噴き出すロケットに押し上げらたG.H.Hの上昇位置を確認すると固定して、パージのスイッチ。外から軽い破裂音と何かが倒れた音が響く。すぐさまヘカトンケイルのコンソールに『000』と打ち起動させる。
機体腹部側面から円柱状のパーツが飛び出すと、金属で出来た細い虫の足の様なアームが伸び出した。そしてロケットは掴む直前ではじけ飛び、一瞬バランスを崩したものの、ヘカトンケイルのアームがG.H.Hをしっかり掴むと、バランスを取り戻し吸い込む様に収めていった。
「やったね、なんか最後ぬるっとファンタジーしてたのが気になったけど結果オッケーさ」
「一瞬ヤバかったけどな、とりえず船も着いてるし向かうぞ、バードンは報告入れといてくれ」
「了解」
『こちらブラボー2、回収に成功、船に向かう。あと足止めだが、いいのがある。期待しておいてくれ』
『アルファ1了解。出来たら何をするか言ってくれ』
アルファ1の問いにバードンはドヤ顔で答えた。
『コカトリス-100を打ち込む』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます