第十六話 味見をしましょう!

「こ、こんなところに連れ込んでどういうつもりよ!!」


 キッ!

 と、花蓮の方を睨みつけてくるのは、放課後に捕獲した美少女こと真白だ。

 あの強気な瞳を早くトロトロにして、精神も身体も屈服させてあげたい。


(そして最終的には莉央ちゃんのように……おっと、危ない危ない涎が)


 それにしても。

 真白は態度の割にはおとなしい。


(私がとっ捕まえて、こうして家に連行してくる間も、全く抵抗しませんでしたし……今もこうして、正座してテーブルの前におとなしく座ってますからね)


 というかだ。

 花蓮の聞き間違いでなければだが——なんなら連行する道中、真白はこんなことをブツブツ小声で言っていた気がする。


『うぅ、花蓮に腕掴まれてる……掴まれちゃってるよぉ……あ、あたしこれ、どこに連れていかれちゃうの? ま、まさか……これから花蓮と……っ』


 まぁ現在の態度からすると、さすがに聞き間違いだとは思うが。

 さてさて真相はいかに。


 などなど。

 花蓮はそこまで考えたところで、とあることに気がつく。


(はっ! 私としたことがお茶とお菓子を出すのを忘れていました!! たしか編集者ちゃんからもらったお菓子があの辺に〜)


 ガサガサ。

 ゴソゴソ。

 ガサゴソ。


 よし。

 準備完了だ。


「お待たせしました、はいどうぞ!」


「な、なによこれ! どういうつもり!?」


「どういうつもりもなにも、お客様にお茶を出すのは当然じゃないですか!」


「つ、つまりこれ、あたしのために出してくれたってこと!?」


「えと、はい……そういうことですけど」


「っ!」


 バッ!

 と、俯いてしまう真白。

 次の瞬間。


「優しい……好き」


 ボソ。

 と、そんなことを言ってくる真白。


 これはあれだ。

 ちょっと優しくされたら、すぐに好きにしまう男子の心情に近いものに違いない。

 もっとも、件のラブレターからするに真白は最初から花蓮が好きだったようだが。

 にしてもだ。


「チョロ」


「ぅ! ど、どういう意味よ!!」


「そのまんまの意味ですよ! チョロくて可愛いな〜って!」


「か、かわいいって——っ! ふ、ふん! そんなこと言っても無駄なんだからね! あたしはあんたのことなんて、全くもって好きなんかじゃ——」


 ガシッ!

 と、花蓮は真白の言葉を断ち切るように、彼女の手首を掴む。

 そして。


「私は好きですよ、真白ちゃん……私のものになりませんか? 優しくしてあげますよ」


「……なりゅ、しゅき」


 とろんとした様子の真白。

 やはり強くでられたり、優しくされるとすぐにこうなってしまうに違いない。

 チョロくて可愛い。


(さて、となればより私好みに調教しようじゃないですか! そして将来的には、莉央ちゃんと三人で……じゅるり) 


 などなど。

 花蓮はそんなことを考えた直後。


「それではいただきます」


 ぐいっ!

 花蓮は真白を引き寄せ、味見を開始するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る