第十五話 お持ち帰りってやつですね!

「はぁ、一人で学校から帰るのなんていつぶりでしょうね……」


 今日はいつも一緒に帰っている莉央が、職員室からの呼び出しにより、一緒に帰れなかったのだ。


「用事が終わるまで待ってるって言いましたのに……莉央ちゃんってば」


 花蓮を待たせたら悪い。

 とのことで、莉央は花蓮に先に帰るように何度も言ってきたのだ。

 結果、現在の状況になっている。


「うぅ、寂しくて死にそうです」


 人肌恋しい。

 花蓮は可愛い女の子——特に莉央の色々を定期的に摂取しなければ、死んでしまう病なのだ。


 などなど。

 花蓮がそんなことを考えていた。

 まさにその瞬間。


「待ちなさい、梓花蓮!!」


 背後から聞こえてくる美少女の声。

 見なくてもわかる。


(私の美少女センサーがビンビンと反応している!!)


 待てと言われて、待たないわけがあるだろうか。

 待てと言われて、振り返らないわけがあるだろうか。

 いや、ない。


 バッ!


 呼ばれてから、振り返るまでの時間。

 ここまでにして0.000000001秒。

 結果的に言うなら。


(おお、神よ……振り返ってよかった)


 そこにいたのは美少女だった。

 美しい銀髪ツインテール、そして強気そうなつり目。

 やや貧相な身体を、制服で覆っているその少女。


「八重歯がかわいい……だとっ」


 間違いない。

 ツンデレキャラだ。

 ツインテ貧乳つり目八重歯は、ツンデレと相場が決まっているのだ。


 などなど。

 花蓮がそんなことを考えていると。


「先に名乗らせてもらうわ! あたしの名前は香川真白(かがわましろ)! 今日はあんたに話があってきたの!」


「ほうほう話ですね!! いったいどんな話ですか!?」


「梓花蓮!」


「はい!」


「一目見た時から、あたしはあんたのことが……あんたのことが!」


「私のことが!? 私のことがなんですか!? まさか好——」


「す、好——っ、嫌い!」


「……」


「あんたのことなんて好きでもなんでもないんだから、変な勘違いしないでよね!」


「……」


「は、話はこれで終わりっ! 邪魔したわね!」


 言って、走り去っていってしまう真白。

 意味がわからない。

 けれどわかることが一つ。


(バカな……女性恋愛百戦錬磨の私が、一方的にフラれた……だと!?)


 ショック。

 思わず崩れ落ちてしまうほどにショック。

 だったのだが。


「おや? これはなんでしょう」


 真白が去った後。

 道路に落ちていたのは一通の封筒だ。

 ハートマークがついたそれは、どう見てもラブレター。

 宛先は——。


「私じゃないですか! 落とし物見たいですが、私宛となれば……どれどれ拝見」


 ガサゴソ。

 そうして取り出した手紙。

 そこに書かれていたのは。


 好きです。

 付き合ってください。

         香川真白より


「……」


 なるほど理解した。

 先ほど真白はテンパっていたに違いない。

 

 最初は花蓮を呼び止め、このラブレターを渡すつもりだったのだ。

 けれど緊張して、ラブレターの存在を忘れて直に告白しようとした。

 結果緊張しすぎて告白しないで逃亡。


「可愛いじゃないですか……ペロリ」


 なんにせよすることは決まった。

 まだ真白は遠くには逃げていないに違いない。


「今夜は寝かせませんよ、真白ちゃん……はぁはぁ」

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