第十三話 これが看病なんですね!

「うぅ……うち、もうダメかもだ」


 朝起きたら、莉央がダウンしていた。

 咳がゲホゲホ完全なる風邪だ。


「花蓮……もしうちが死んじゃっても、うちのこと……忘れないでくれ」



「ちゃんと安静にして、薬を飲んでるんだから風邪ではまず死にませんよ!」


「でもぉ」


「いいですから、莉央ちゃんはそこでちゃんと寝ていてください!」


「うち、あんまり病気したことないから……不安なんだ」


 もぞもぞ。

 と、布団の中で動く莉央。

 きっと、じっとしていると余計に不安になるに違いない。

 だがしかし。


(私としては、莉央ちゃんには安静にしてもらわないと困るんですよね)


 もし。

 本当に万が一。

 風邪が悪化して肺炎に、そこから莉央が死ぬなんてことになったら。


(うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!)


 ダメだ。

 考えるのはよそう。

 とりあえず、今することは一つ——莉央を少しでも安心させて、しっかり休んでもらうのだ。

 そうすれば、風邪はただの風邪のまま治る。

 となればすることは一つ。


 なでなで。

 なでなでなで。


「か、花蓮……?」


「大丈夫ですよ、莉央ちゃん。私はどんな時でも、ずっと絶対に莉央ちゃんのそばにいます」


「うぅ……」


「よしよし。莉央ちゃんの不安がなくなるまで、こうしてなでてあげますから、大丈夫です」


「花蓮……花蓮っ!」


「はい、花蓮はここに居ますよ」


 なでなで。

 なでなでなで。


「うち……花蓮のこと、大好きだ」


「はい。私も莉央ちゃんのことが大好きです」


「病気が治ったら、花蓮に気持ちいいこと……たくさんして欲しい」


「っ!」


 やばい。

 弱気になっている莉央、大胆で可愛い。

 思わずこのままベッドにダイブして、莉央をめちゃくちゃにしたいところ。


(治す……莉央ちゃんを一刻も早く治して、めちゃくちゃにする!!)


 などなど。

 花蓮がそんなことを考えていると。


「ん……花蓮、ありがとう。うち、なんだか安心してきたぞ」


「そうですか、よかったです……ところで莉央ちゃん! 何か食べたいものはないですか?」


「食べたいもの? うーん……美味しくて、お肉とお野菜がたくさん入ったお粥が食べたいぞ」


「任されました! 私が作ってあげましょう!!」


「花蓮、料理作れるのか?」


「莉央ちゃんをめちゃくちゃにするためなら、私はなんだって出来ます!」


「めちゃくちゃ……?」


「莉央ちゃん! また不安になったらいつでも呼んでください! 私は台所で、莉央ちゃん専用飯を作ってきます!!」


 こうして、花蓮の大いなる戦いが幕を開けたのだった。

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