第十一話 カードゲームをやりましょう!

「うちのターンドロー!」


 と、花蓮とテーブルを挟んで向こう側——今日も今日とて元気に響いてくるのは莉央の声だ。


「このモンスターを召喚して、花蓮にダイレクトアタックだ!!」


「くっ、私のライフが残り1000に……っ」


「一つ前のターンで盤面にモンスター居なくなってて、二つ前のターンにドローを封印されていたのが効いたな! 今回はうちが勝てそうだ!」


「まだまだ分かりませんよ!」


「わからせてやるぞ! ……と言いたいところだけど、これで今回のターンは終わりだ!」


 言って、ターンを回してくる莉央。

 だがしかし。


(困りましたね。私のターンなわけですが、もう何を引いても負ける気しかしません)


 莉央の言う通りだ。

 ドローなし、盤面なしのターンが続いてしまったのが致命的だった。


 リソース。

 すなわち手札も場も圧倒的に足りないのだ。


 一方、莉緒は手札も場も潤沢。

 第二の手札と言われている墓地まで潤沢と来ている。


(つまり状況を再確認しても、私が圧倒的に不利……これで勝つにはそれこそ、運命的な引きをするしか、ないっ!!)


 などなど。

 花蓮はそんなことを考えながら、山札からカードを引く。

 すると出てきたのは。


(こ、これは!! 手札に4枚集めると勝利が確定するカードの右腕!!)


 まぁ、そもそも手札が今二枚の上、他のパーツは来てないから意味ないのだが。

 要するに終わった。


(次のターンの引きに賭けるしかないわけですが、問題は次のターンが回ってこなそうなことですね)


 仕方ない。

 やれるだけやろう。


「では、私はこのモンスターを裏側守備表示で召喚、最後に残り一枚の手札を魔法・罠ゾーンにセットして終わりです」


「それじゃあうちの——」


「莉緒ちゃん、突然ですが賭けをしませんか?」


「賭け?」


 ひょこり。

 と、可愛らしく首を傾げてくる莉央。

 しかし、そんな莉央の表情からはどことなく、余裕が見てとれる。


 花蓮は先ほどやれるだけやると言った。

 それはつまり、勝つためならなんでもやるということ。


(さぁ、その余裕を剥ぎ取ってやりますよ!)


 考えたのち。

 花蓮は莉央へと言う。


「身体を賭けましょう」


「から——えっ!?」


「負けた方は勝った方の言うことを、一日なんでも聞かなくてはならない」


「な、なんでも!?」


「言うならば性奴隷です。負ければ性奴隷にならなければいけないのです」


「うちが負けたら、一日花蓮の性奴隷にならないといけないって、そんなの……うぅ」


 と、頬を真っ赤にして困った表情をしている花蓮。

 だがそんな彼女は小さな声で。


「う、うち……花蓮にナニをされちゃうんだっ」


 もじもじ。

 もじもじもじ。


 と、明らかに勝負そっちのけ状態になっている。

 これこそが花蓮の狙い。


(莉央ちゃんは頭がいいから、カードゲームもめちゃくちゃ強いです!)


 だがそれは冷静な時だ。

 ここまで余計なことを考えれば、必ずミスをするに違いない。


(私の勝気はそこにしかない! そして次のターン、神引きして勝つ!)


 などなど。

 花蓮が勝利のプランを考えていると。


「と、とにかくうちのターン……ド、ドロー!」


 デッキからカードを引く莉央。

 彼女はそのカードに目もくれず、どこか一点を見つめたまま洗い呼吸を繰り返している。


「奴隷……花蓮の性奴隷、うちが……いったい、どんな目に……うぅ」


 何やら莉央の様子がおかしい。

 引いたカードどころか、手札すら見ていない。

 いったい彼女は何を考えて——。


「さ、サレンダー……だ」


「はい?」


「ひ、引いたカードがその……弱過ぎたんだ。だからえっと……うちの負け、だ」


「……」


「か、花蓮……っ、うち……うちっ!」


 バサッ。

 と、カードを落として身を乗り出してくる莉緒。

 その瞳からはもはや、カードゲームのことなど消えているに違いない。


(莉緒ちゃん……性奴隷のことしか考えられなくなっちゃったんですね)


 かわいそうに。

 だが責任は取ろう。


 バサッ。

 花蓮は自らもカードを投げ捨て、莉央へと飛び掛かるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る