第九話 宿題をしましょう!

「うぅ……この問題、まったくわかりません!!」


「どれだ?」


 場所は夕方の自宅。

 ひょこりと、隣から花蓮の手元を覗いてくるのは莉央だ。

 そんな彼女は問題をしばらく見たのち。


「これ、さっきもうちが教えた奴だ!」


「数字が違かったら、それはもう違う問題なんですよ!」


「そんなことない! うちが教えたやり方を思い出せば、花蓮ならきっと解けるんだ!」


「そう言われましても……」


「数学は公式と、その問題の解き方の基本を覚えておけばみんな同じだ! 数字が変わるのは見せかけに過ぎないんだ!」


「でも1+1と17374839295+384636299じゃあ計算の難易度が違いますよ!」


「それは屁理屈だ!」 分解したらやってることは同じなんだ!」


「うぅ……」


 にくい。

 スポーツ万能、勉学優秀の莉央がにくい。


(莉央ちゃんは性格と見た目的に、どう考えても勉強は出来ないキャラじゃないとおかしいじゃないですか!)


 それなのに、いったいどうしてこうんなことに。

 と、花蓮が唸りながら頭を抱えていると。


「大丈夫だ! 花蓮がしっかり出来るようになるまで、うちが何回だってしっかり教えてやるんだ!」


 ずいずい。

 と、花蓮の真横——身体がもう触れ合うほどに、身を寄せてくる莉央。


(っ! り、莉央ちゃんの香りが……っ!)


 それだけではない。

 当たっているのだ。


(莉央ちゃんのぷにぷにして、すべすべ柔らかな腕が——特に二の腕が私の腕に!!)


 ぷにぷに。

 ふにふに。


 そして時々、ふわっと香ってくる莉央の匂い。

 もうこれだけでご飯三杯はいける。


「つまり、ここはこうなるんだ! どうだ? うちの説明でわかったか? ……ん? どうしたんだ、花蓮?」


 ひょこり。

 と、至近距離で花蓮のことをのぞいてくる莉央。

 きっと、花蓮が無言だから心配してくれているに違いない。


 だがそれは逆効果だ。

 花蓮が無言だったのは、莉央のぷにぷにに惑わされていたが故。

 それに加え今は。


(っ、これは!!)


 なんと莉央さん。

 花蓮のことを覗き込んできたが故に体勢が変わり、とんでもないところが見えてしまっているのだ。


(み、見えてるじゃないですか)


 ヴァルハラが。

 すなわち、制服の開いた胸元から覗く谷間が。

 わずかな汗に濡れ、しっとりといい匂いのする桃源郷が。

 しかもそれは。


「花蓮?」


 ぷるんっ。

 莉央がわずかに動くたびに揺れるのだ。

 ぷるぷるとまるでプリンのように。


 これは。

 これはもう。


 カバっ!!


「か、花蓮!? ど、どうしてうちのことを押し倒すんだ!?」


「莉央ちゃん! 大人の勉強をしましょう!」


「お、大人……の?」


「いただきます」


 その後。

 翌朝までにゃんにゃんした。

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